子どもの心身の発達時期と、小学校・中学校という学校区分や制度の「ずれ」が原因で生じる「中1ギャップ」。中学1年生で不登校やいじめが急増する背景には、この「中1ギャップ」や、親の関わり方が影響していると法政大学の渡辺弥生教授は指摘します。中学での問題を予防するために、親はどんなことに意識すればよいのか。渡辺先生へのインタビュー、今回は後編です。

<前編の記事> いじめや不登校 「中1ギャップ」に親はどう向き合う

10歳~中学生の、男女による反応の違いは

DUAL編集部 中1ギャップに男女差はありますか。

渡辺弥生先生(以下、敬称略) 私の見たデータではありました。10歳ころから中学生にかけては、基本的に男女ともに親にはうれしいことや悲しいことを言わなくなりますが、男の子のほうが特に言わなくなります。遊びに行くときに、「誰と?」と聞くと、男の子は「みんな」とか「友達」とか、アバウトに答えますが、女の子のほうが、対人関係が微妙で、そこに対して感受性が強い。

 休み時間なども、男の子は、一緒にボールを蹴るとかプラモデル作るとか、何か活動を通してつながろうとしますが、女の子は、外に行くよりも情緒的なことをたくさん言い合って、互いに共感していく。だから、互いに悩みを打ち明けすぎて気分が落ちやすいところがあります。男の子の場合、活動を共有する子がいないと孤独になりやすかったり、攻撃的になりやすかったりします。気持ちを言うのは女々しいと思って、制御したり、「弱みを見せると負け」という気持ちから、友達ができないと「俺はそもそも友達なんていらない」など、つっぱたりするところがあります。

―― 中学受験をする子は、多感な時期に受験勉強が生活の中心になりがちです。子どもの心理的にはどのような影響がありますか。

渡辺 受験は成功しても、そこで燃え尽きると、つらいですよね。入学後に熾烈な成績の競争があると疲れてしまう。また、子どもは視野が狭いので、「受験が失敗したら世の中終わりだ」と思ってしまうこともある。いずれにせよ色々な面で、それなりにリスクは出てきます。だから、親は予防線を張ることが大事。「チャレンジしている学校は○○の良さはあるけど、近くの公立には△△の良さがあるし、色々な選択があるから」というのをしっかり伝えておくことが大事だと思います。親のホンネから誠実に伝えることが大事です。

 また、真面目なお父さん、お母さんは先回りしすぎるし、完璧にやり過ぎてしまいます。あまりお膳立てし過ぎると、子どもに期待し過ぎて、子どもの予想外れの反応にイライラしやすくなります。子どもの負担感も大きくなって問題が大きくなることも。子どもは意欲の塊なので、意欲が出たところで、「それはいいかもね、じゃあ、◎◎しよう」と、子どもの気持ちに沿って支援してあげるほうが、健康的にうまくいきます。