いじめや不登校は、中学1年で急増するというデータがあります。「中1ギャップを乗り越える方法 わが子をいじめ・不登校から守る育て方」(宝島社)などの著書がある法政大学の渡辺弥生教授によれば、そうした問題行動が増える背景には「中1ギャップ」という現象があるとのこと。小学校から中学校へと学校の環境が変わり、年齢的にも、思春期にさしかかる時期。そこで生じる「中1ギャップ」とは何なのか。そんなとき、親は子どもとどう向き合えば良いのか。2回に分けて渡辺先生に話を伺います。

新しい環境や仲間、ワクワク感より緊張が先に立つことも

日経DUAL編集部 小学校から中学校に上がると、1日の過ごし方や友人などの人間関係ががらりと変わります。どんなことに気を付ければいいのでしょうか。

渡辺弥生さん(以下、敬称略) 子どもの心身の発達時期と、小中学校の義務教育の学校区分や制度が必ずしも一致していないことから生じる心身のギャップを、「中1ギャップ」と呼んでいます。中学1年生になると不登校、いじめが急増するというデータがあるのですが、そのような問題行動が増える背景には、中1ギャップがあると考えられます。

 中学に入ると、学校が担任制から教科制に変わり、仲間関係も変わります。子どもが元気な状態であれば、新しい環境や仲間へのワクワク感につながりますが、小学校高学年くらいから疲れが出ている子は、「この先どうなっちゃうんだろう」という不安や緊張が先に立ってしまう。また、親も「もう独り立ちできている年齢なのに、なぜつまずいてしまうの?」と子どもを責めた感じになりがち。また、発達的な特徴などとそういった要素が重なって、中学のところで、問題がでやすいのです。

―― 親の接し方の変化も関係しているのですか。

渡辺 幼児や小学校低学年のうちは、親が意識せずとも、子どもが「見て、見て」と言ってくるし、親がやらなければならないこともあるので、注意を向けざるを得ないですよね。ところが、子どもが大きくなるにつれて、お父さんとお母さんは、「ちょっと一人でできるようになったから、ようやく自分のしたいことや仕事にギアチェンジできる」と思って、放任しがちになります。一方、思春期くらいの子どもは大人に近づいて複雑なことを考え出すので、親に心配かけまいとして、あまり言わなくなる面もあります。だから、意識的に気にして見てあげないと、子どもの変化を見逃してしまいます。

―― 中学校でいじめが起こるメカニズムは。

写真はイメージです
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