危機的なときは、「仕事を休んで話を聞くね」という決断も必要

―― 子どもが話を聞いてほしいときに「ちょっと忙しい」と言って後回しにした、などということの積み重ねが、親への疑いを生むのでしょうか。

渡辺 親の立場からしたら、いつも聞いていたら仕事なんかできないですよね。ただ、「どうしたの? 大事な話だね、今は無理だけどあとで聞くね」といった応対や、危機的だと思ったら「今日は仕事を休んで聞くね」などの、思い切った決断も必要です。親がスーパーマンではないのは分かりますが、それくらい腹をくくるところもないと、子どもは、「自分のことはどうでもいいんだ」と思ってしまう。特に思春期の子どもは、「やっぱり仕事のほうが大事なんじゃないか」などと、親の反応を見ているところがあります。

 私自身が子育てをするなかで、発達心理をやっていてよかったと思うことがありました。というのも、子どもの変化や成長について何も知らないと、「なんでこんなことをするの?」というイライラばかりになる。でも、知っていると、「成長したからこういうことができるようになったんだ」と思えます。ややこしいことがおきるようになるのは、実は子どもが成長しているから。色々なことを考え、賢くなってくるからこそトラブルが増えていくんです。そう思うと、あたたかいまなざしを持つことができます。「中1ギャップ」という言葉は、不安をあおるように聞こえるかもしれませんが、私としては、「こういうことが成長背景にあるので、よく見ておいてもらうと予防できますよ」ということをメッセージとして伝えたいのです。

(取材・文/星野ハイジ、日経DUAL編集部 砂山絵理子)