10歳前後は子どもが一番変化する時期

―― 先生は、発達心理学の観点から、10歳くらいで一番子どもが一番変化すると指摘しています。

渡辺 個人差は大きいですが、だいたい9~10歳になると、子どもに変化が生じます。友達が何人いてうれしいというよりは、友情とはどういうものかを気にするようになる。小3くらいまでは、「みんなと仲良し」と言い切れたけど、だんだん、「バスのときにはこの子と一緒に座りたくない」とか、複雑な気持ちを抱えるようになります。

 勉強の内容も、具体的な学びから、抽象度の高い内容に変化します。自分自身についても疑問が出てきて、自分が分からなくなる。いろんな意味で迷いが出てくるのです。しかも、第二次性徴期に当たるので、ホルモンの影響も出てきます。自分の身体の変化はコントロールができないので、不安に思う。そういう意味では、この時期に親がよく見ておいてあげないと、気持ちがへこんだり、感情のマネジメントがうまくできなくなったりしてしまうかなと思います。

―― 周りを意識しだすのも、10歳頃からですか。

渡辺 小学校に入ったころから、子どもは周囲と自分を比較するようになります。小学校中学年を過ぎると、誰でも「自分はここが苦手だ」などと思うようになる。比較することで自分のことがよく分かるようになるので、比較すること自体は悪いことではありません。ただ、子どもの味方であるはずの親が子どもを追い込むようなことがあってはダメです。

 真面目な親ほど、ベリーグッド(very good)を目標にするから、「もっとこうできるでしょ」とか、いいところを褒められないで叱ってしまう。素晴らしくいい子を目標にされると、子どもは「ああ、自分って全然ダメだな」と落ち込んでしまいます。特に、日本の受験勉強などに価値を起き過ぎている親は、ベリーグッドを求め過ぎるので、もうちょっと、「グッドイナフ(good enough)でいい」という接し方をしてほしい。「あなたこれは苦手かもしれないけど、これはできるから、その線でがんばったらいいんじゃない」といったふうに。比べるのは他人とではなく、少し先のなりたい自分と今の自分、にシフトさせたいですね。

 最終的には親は味方でないといけません。「テストで良い点をとったら」など条件付きでの受け入れ方ではなくて、「とにかくあなたが生まれてきてくれて、うれしい、ありがたい」ということを、メッセージとしてビームのように届けられていれば、子どもが道を外すことはあまりないと思います。例えば、非行に走る子どもは、親の愛を試し続けているところからも分かります。