エッセイスト・ラジオパーソナリティーなど多方面で活躍中の小島慶子さん。オーストラリアで2人の男の子の子育て真っ最中であり、仕事との両立をテーマに人気連載『小島慶子 DUALな本音』で綴っています。今回は特別編集長インタビューということで、中川李枝子さん著『ママ、もっと自信をもって』を読んだ感想をきっかけに、自身の子育てを振り返ります。

読みはじめてすぐに、涙が止まらなくなりました。

日経DUAL編集長――小島さんは、『ぐりとぐら』などの児童文学作家・中川李枝子さんのファンだとうかがいました。 『ママ、もっと自信をもって』は子育て真っ最中のママたちにエールを送る本ですが、感想を教えてください。

 中川先生の作品は私自身が子どものころから大好きで、絵本もそれはそれはたくさん読んできたのですが、ご自身の生い立ちや保育士時代のお仕事について書かれた文章を読むのは初めてでした。実は私、今日、この本の「はじめに」を読みながら、ずっと涙が止まらなかったんです。

―― えぇ!? 泣いてくれたんですか! すごく嬉しい。・・・という言い方もおかしいですが、どこを読んで?

 特に、「自分のいないところで、子どもたちがどれだけお母さんの自慢をしているか知ったら、ビックリすると思いますよ」(「はじめに」より)というところが大好きです。自分でも涙があふれてきたことにびっくりして、どうしてだろう……と考えました。

 実はこの本読む前に、仕事でママタレントさんたちのブログをたくさん目にしていたんですね。ブログの中に登場する方々の子育て姿がとても華やかで、眩しくて、でも私にはちょっと遠い世界に思えました。今の若いママさんたちも、こういう豪華な子育てブログを見て、自分の子育てと比べて、愕然とし、疲れてしまっている方も多いんじゃないかなって。でも、『ママ、もっと自信をもって』の中の中川先生は、子どもと関わることを何の飾り気もなく、純粋に楽しんでいらっしゃる。そういう方のつづる文章は、とてもストレートで暖かくて、私の心を優しく包んでくれたんです。

―― 私も、「子どもは、どんなときでもママの味方」というシンプルだけどあったかい言葉は、特に自分が弱っているときなんかに目にすると、涙が出ちゃいます。

 さらに私、この本を読み終わったときに、実は自分の母親に電話をしたんです。

―― お母さんにお電話を?! 

 はい。DUALの読者の中にはご存知の方もいるかもしれませんが、かつて私は母と確執があり、ほとんど会わなかった時期がありました。そのことは『解縛(げばく):母の苦しみ、女の痛み』にも詳しく書きましたが、母に電話をかけることも滅多にありません。簡単な用事で電話をすることはありましたけど。それがなぜか、この本を読み終わったら「母に、電話をかけよう」という気持ちになったんです。そのくらい、心を動かされました。

―― 心を動かされたのは、母を想う娘として?

 そうですね・・・、結局、「母親って強いな、かなわないな」って。この本を読んで、子どもがお母さんのことをどんなに愛しているかを改めて感じたのと同時に、母親はここまで子どものことを愛しているんだと。無償の愛ですよね。いまだに私の母は、私の“大ファン”なんですよ。あんな母親の悪口を本で書いたっていうのに、「慶子ちゃんの本が届いたわよ~!」ってはしゃぐような(苦笑)。

―― あ~、それはかなわないですね、もう。母親って生き物には完敗です。私も、自分が2人の子どもの親になり、何がどうなったってこの2人のことは丸ごと愛しているっていうことを毎日痛感します。それを通して初めて、自分の両親がどんなに自分のことを愛してくれていたのかが分かるようになってきました。

 電話で母の言葉を聞いて、同じことが私と息子の関係にも言えるんだって思ったんです。今はまだ、息子たちは私のことを大好きだと態度でも言葉でも示してくれているけれど、もう少し大人になったときに、母である私のことを「面倒くさい」と感じるだろうと思うんです。

 でも私は今日の電話での母の言葉を聞いて、「親が子どもに与えたものよりも、子どもが親に与えたものの方が何十倍も、何百倍も大きいのかもしれない」と感じました。自分が与えるよりも多くのものを子どもから与えられたから、子どもからのたまの電話も心の底から嬉しいと感じているんだと。母が私に対してそう思っているだろうことに気付けたのも、この中川先生の本と出会えたからだと思います。