多くの親が勘違いしている 「時間が足りない。だから知識が定着しない」
小川先生は話します。
「よく親御さんから、このような声を聞きます。『塾の復習や宿題など、やることが多過ぎて時間が足りません。だから、なかなか知識が定着しないんです……』」
「実はこれって、大きな勘違いなんですね。『時間が足りない』=『知識が定着しない』と、この2つを一緒に考えてしまうこと自体が間違っているのです。塾から言われた通りやっていたら、受験生はみんな時間が足りなくなります。それはみんな同じなのです。だからこそ、時間がない中で、どのように学習のポイントを理解し、定着させるかを考えることが重要ポイントになります」
「時間が足りないから、アタフタ学習になってしまう。アタフタ学習になるから、知識が定着しない。勉強の進め方が混乱してしまったら、一度、ご家庭で学習方針を立て直す必要があります。すべてをやろうとせず、『これだけは絶対にやる!』というものを絞るのです。つまり、取捨選択をするのです」
4年生から5年生へ上がる前に変えるべきは「勉強のやり方」
具体的な方法として、中学受験のプロ家庭教師・西村則康先生はこうアドバイスします。
「4年生から5年生へ上がる前に身に付けておきたいことは、まず勉強のやり方を変えることです。4年生の学習は、いわゆる“受験の基礎知識”で、それが良いか悪いかは別として、くり返し学習をすればテストの点数は取れます。しかし、5年生になると、学習量が1.5倍に増えるため、これまで通りにくり返し学習をしていたら、時間がとても足りません。そのため、一つひとつを細かく復習するスタイルから、その単元の大枠を捉える学習の仕方へと変えていかなければなりません。この問題はこういうふうに解くという覚え方ではなく、『この問題のツボはここだ』という覚え方をするのです」
「例えば算数なら、4年生までは公式に当てはめれば答えを出すことができました。しかし、5年生になると、応用問題へと変わっていきますので、単に式を知っていても解けない問題が出てきます。こうした問題を解くときに大事なのが、図を描くことです。そして、『何が分かっているの?』『何が聞かれているの?』『何を書けば解けそうな気がする?』と自問自答し、手と頭を動かしながら答えを探していきます」
「こうした問題は、くり返し学習で身に付くものではありません。授業で初めてその単元を習ったときに、『この単元のポイントはここだな』という理解の仕方をし、納得感を得ることが大事になります。この納得感さえあれば、塾から大量の宿題が出たとしても、それをすべてやる必要はありません。分かっていることを何度もくり返す時間などないのです。こうしてやるべきことと、やらなくてよいことを取捨選択していきます」
「つまり、授業の聞き方を変え、“反復”から“納得感”へと学習への取り組み方を変えることで、知識を定着させるのです」
「近年、大手進学塾では宿題の量がますます多くなっています。真面目な親御さんほど、それを『全部やらせなきゃ』と思ってしまいますが、塾の宿題は必ずしもすべてをやらせる必要はありません。宿題をこなすことで精いっぱいになり、納得感を持たないままただ闇雲に勉強をするアタフタ学習は、お子さんにとって何もいいことはありません」
「既に理解できていることを何度もくり返して学習量を増やすのではなく、やるべきことと、やらなくてもいいことを取捨選択し、やるべきことに集中するほうが、得点につながります。ご家庭で取捨選択をするのが難しいという場合は、第三者のプロに託すことをおすすめします。一番良くないのは、どうしてよいか分からないまま、この3カ月を過ごしてしまうことです」