子どもの教育や将来を考え、親子で日本を飛び出す海外移住に興味を持つ人は多いでしょう。海外で会社員として働く形態には、主に「海外駐在」と「現地採用」の2種類があります。

グローバルライフプランを現実的に考えるためにあらかじめ知っておきたい海外移住の情報。この連載では、シンガポール在住ファイナンシャル・プランナー(FP)花輪陽子さんが、現地採用の落とし穴や気になる出産、子育て事情を、海外で実際に子育てをしているお金のプロの視点から伝えていきます。シンガポールにおける共働き世帯の「家事・育児」サービスについて紹介した前回に続き、今回はアジアトップレベルを誇る「教育環境」のメリット・デメリットについて解説します。

中国語・英語のバイリンガル環境が整う、幼児教育の意識の高さ

3歳くらいからバイオリンやアート、ダンスやドラマなどの芸術活動にも力を入れている学校も多数
3歳くらいからバイオリンやアート、ダンスやドラマなどの芸術活動にも力を入れている学校も多数

 ファイナンシャル・プランナー(FP)の花輪陽子です。シンガポールの教育水準はアジアトップレベルで特に幼児教育が優れていると感じます。

 同じ2歳児を持つローカルのママ友がとても教育熱心で子どものお菓子もアルファベットのビスケットを使って英語を教えていたり、USのAmazonで取り寄せた英語の発音や数を楽しみながら学べるDVDを利用していたりします。

 “教育熱心な国”というのはデータでも現れており、英教育専門紙が今年9月に発表した「世界大学ランキング」では、シンガポール国立大(24位)は東京大(39位)を抜いてアジアでトップ、15歳児を対象にした国際学力テスト(PISA)でも日本を抜いて世界でトップレベルを誇ります。

 英語と中国語を学べて学力の高いシンガポールに教育移住するのはとても魅力的に感じますね。世界的な大富豪のジム・ロジャース氏もシンガポールの永住権(PR)を取得し、お嬢さんをローカルの有名公立校に通わせています。

外国人が人気のローカル校に入るのは至難の業

 しかし、実際にはローカル校は地元民やPRが優先されるので外国人が良い小学校に入るのは至難の業。PRの取得も納税や雇用を創出することなどで国への貢献が大きくないと厳しいです。外国人の場合は小学校に入学をするために試験を受けなければならず、年齢よりも学年を落として入らないといけないこともあるようです。

 加えて、公立校の学費も外国人の場合は高くなり、学年にもよりますが、月5万円前後はかかるので日本の公立校と同じような値段で受けることはできません。無事に公立校に入れたとしても小学校終了試験の成績で希望の中学校やコースなど今後の進路が決まるためにその後の勉強も大変です。

 母語が日本語の場合、中国語の授業を免除にすることもできますが、免除にすると小学校の卒業試験でその他の科目で高いスコアを取る必要があり、頭の良い地元民と競うのに別の苦労が伴います。中国語が母語ではない家庭では中国語の家庭教師を雇うなど対応している場合が多く、講師にもよりますが1時間4000円程度とかなりお金がかかるようです。