待機児童解消を公約に掲げた小池百合子氏が、今年8月、東京都知事に就任しました。このたび、日経DUALは小池氏へのインタビューを実施し、子育て世代が知りたい様々なホットな質問を都知事に投げかけました。インタビュアーは認定NPO法人フローレンス代表の駒崎弘樹氏と、日経DUAL編集長の羽生祥子の2人、全3回でお届けします。
 第2回は保育士不足の問題に対する東京都の取り組み、医療的ケア児を育てる家庭の支援について聞きました。

【第1回の記事】
小池百合子インタビュー 保育園不足、働き方改革

保育士の仕事を安心して長く続けられる環境づくりが必須

駒崎弘樹さん(以下、敬称略) 小池知事が補正予算で示された待機児童対策について伺わせてください。9月に記者会見でも、保育園の開園工事費用補助、宿舎借り上げ支援の対象拡大といった待機児童対策を発表されましたが、すごく手堅く、実務家である私にとっても「非常に前に進んだな」という印象を受けました(関連記事「駒崎弘樹 小池新都知事の待機児童対策についての解説」)。

 一方で、目下、東京では保育士不足がはなはだしく、昨年11月の保育士有効求人倍率(1人の保育士に何件の求人があるかを示す指標)は都心で66倍という非常に厳しい状況にあります。この点にどのような手を打たれるか、改めて考えを伺わせてください。

小池百合子さん(以下、敬称略) 国のほうも保育士の確保として様々な対策を打っていますが、東京都としても保育士の報酬の部分に着目して、バックアップしていきたいと考えています。知事選のときから申し上げてきたことですが、安心して働き続けるために「住居の確保」は重要だと思っています。せっかく保育士の資格を持っていても、「他の職種のほうが割がいい」となれば、優秀な人材が流れていってしまいますから。

 東京都はこれまでも、保育士の方々が生活する宿舎の賃料(月8万2000円相当)を補助するという支援を行ってきましたが、採用後5年目までという制限がありました。今回はこの制限を取り除いて無期限にする形で支援を拡大することを決めました。「保育士になることで生活の安定を確保できる」という安心感を持てるようにと考えました。

駒崎 非常に効果があると思います。

小池 支援を無期限にした意図としては、もちろん採用の安定という目的もありますが、ベテラン保育士の方々にぜひ長く働き続けていただきたいという思いがあります。保育士という仕事を安心して長く続けられる環境づくりが、保育全般の安定のために必要な条件だと考えました。

 それから色々と現場の声を伺っていくと、「保育士が働くために自分の子どもを預ける場所がない」という首をかしげる状況が起きていますね。保育中の保育士の方々をどうサポートしていくかというのも、とても現実的な課題だと思っています。今、そして次年度以降も続く中長期的な課題解決として、私はそういったコンセプトでやっていきたいと思っています。