子どもの成長はうれしいものですが、保育園から小学校へと進むにつれて、「うちの子は、まわりのお友達とうまくやっていけるだろうか」と心配になることも増えてきます。ちょっとくらいのけんかは、誰もが通る道と思えても、いじめとなると話は別。エスカレートする前に適切に対処をし、いじめから子どもを守ることが重要となってきます。

 もしわが子にいじめを打ち明けられたら。もしくは、打ち明けられないまま、いじめられている証拠を発見したら。親はどうすればいいのでしょう。誰に相談すればいいのか? 子どもにはどう声をかけるべきか? ―――いじめ問題の第一人者である大学教授、現役スクールカウンセラー、いじめに立ち向かうNPO法人の専門家などに取材をしました。

 前回は「親にいじめを打ち明けられない子どもの心理」について解説しました。第4回では、子どもからいざ、いじめを打ち明けられたときに、親はどう対応すべきなのか、というお話です。「いじめられている子がクラスにいる」と相談されたときの、わが子への声がけについても紹介します。

【子どものいじめ・SOS 親ができること 特集】
第1回 いじめ コップに一滴ずつ水を注がれるような苦しみ
第2回 「いじめに親はどう対応したか」 読者アンケート
第3回 子どものいじめ なぜ親にすぐ打ち明けないのか
第4回 親の「聞く力」がいじめの解決を左右する ←今回はココ
第5回 いじめ問題「先生のNG対応」 親が変えるには
第6回 いじめから不登校に。でも、また立ち上がれる

 「何となく様子がおかしい」「もしかして、いじめられてる?」と思ったときには子どもに直接聞いてみるのは大事なことだろう。早めに手を打つことによって、いじめが進行する前に芽を摘むことができるかもしれない。

 しかし、前回でも紹介した通り、子どもにとっていじめを打ち明け、状況を説明するのは難しいことだ。子どもへの上手な聞き取り方法について、専門家に話を聞いた。

親の「聞く力」が、精神的回復力の高い子を育てる

 子どもの気持ちを言語化するために、有村教授が勧めるのは「スクールカウンセリング」の手法だ。カウンセリングといっても病気のように原因を突き止めて治療するのではなく、子どもの気持ちに寄り添い、子ども自身が問題を解決する力を引き出すことが目的。

 「『○○くんにイヤなことをされた』と打ち明けられたときに、『やりかえしなさい!』『やめてって言いなさい』と指導するのではなく『そうか、そんなことされて悲しかったね』とじっくり聞いてあげること。さらに『そんなことされると○○くんのこと苦手になっちゃうね。いじわるされると、宿題も習い事も集中できなくなっちゃうね』など、子どものモヤモヤした気持ちを分かりやすく言語化して、引き出してあげるところまでやってみてください

 親が言語化した「モヤモヤ」が自分の気持ちと一致していたとき、子どもの心はぐっと晴れてくる。気持ちをすっきりさせた後で、「あなたはどうしたい?」と、今後の対処法を考えるよう促すのが、スクールカウンセリングのやり方。「イヤなことはしないでって、○○くんに直接言う」「先生に相談してみる」など、子ども自身がいじめをどう解決したいのかを導き出してほしいと有村先生は言う。

 「自分で『気持ちの処方箋』を持つことができると、逆境に打ち勝つ力が高くなる。はやりの言葉で言うと、精神的回復力、つまり『レジリエンス』の高い子になれると言えるでしょう。反対にレジリエンスが低い子は、いつまでもイヤな出来事を引きずってグズグズと悩んでしまい、なかなか情緒も安定しません」

 読者アンケートには、いじめに対する「気持ちの処方箋」を持てたとも取れる回答も。

いじめを受けていた子どもが、『泣いてばかりいる自分は嫌だ』と言って、積極的に物事に取り組むようになった。学級委員を引き受け、習い事の格闘技の稽古に励むようになった(45歳母親・正社員・子どもは小学校4年生、中学生以上)

■ いじめを止めることや軽減することはできなかったが、本人の強い希望で中学受験を決断したことで、子どもの気持ちの持ち方が少し変化したようだ(50歳母親・その他職業・子どもは中学生以上)

 自分で自分の問題を解決できるような子にしてあげること。これはいじめ問題でなく、その後に待ち受ける受験や就職などの人生の転機や、あらゆる人間関係の問題に応用できるだろう。

<次ページからの内容>
・高学年の子にやりがちなNGカウンセリング
・話がグチャグチャになりがちの子には「描いてみせる」のが有効
・「いじめられている子がクラスにいる」と打ち明けられたら
・小さなサインに気づける親になって