どんな子もいじめのターゲットになり得る

 栗原聖子さん(仮名)は平成13年から東京都のスクールカウンセラーとして勤務している。小学校1校につき年間38日、月に3回から4回の非常勤で、他の学校との掛け持ちで派遣されている形だ。

 「ある小学校に限っていえば、今相談を受け持っているケースは30~40件。そのうちいじめのケースは6~8件というところです」

 いじめの相談件数は意外と少ない印象だ。

 「でも、不登校の相談の中にいじめが隠されているケースがありますから。小学校1年生の不登校は、新生活のペースについていけないといった理由が考えられますが、高学年の場合はクラスでのトラブルで学校に行きたくないというパターンが考えられるので、慎重に話を聞くようにしています」

 相談は親から受ける場合もあれば、子どもから直接持ちかけられる場合もある。

 「特に東京都は、平成26年度から小5、中1、高1を対象に、スクールカウンセラーによる『全員面接』というものを行っています。5分から10分程度の短い面接ですが、スクールカウンセラーに対する敷居が低くなるという効果もあるし、なにより『いじめを受けているのではないか』と判断した子をピックアップして、その後の個別面談につなげることができます」

 個別面接でいじめが発覚すれば、担任教師に報告をし、一緒に対策を練るという。スクールカウンセラーの目から見て、いじめのターゲットになりそうなのはどんなタイプの子なのだろうか。

 「いじめのターゲットには、どんな子もなり得ると言ったほうがいいでしょう。例えば、クラスの人気者の女子が特定の子を仲間外れにしていたとします。でも、周囲の反感を買って、ある日その人気者の子がクラス全員に無視されるといったことも起こり得るんです」

 栗原さんが日々心がけていること。それは「いじめの芽を摘む」ことだという。

 「残念ながら、いじめを完全になくすということは難しいかもしれません。でも、スクールカウンセラーと教師が早い段階で的確に関わることで、いじめが大きくならないうちに解決することができると考え、日々取り組んでいます」

 そのためには、「これっていじめかも?」と思った時点で、子ども達には積極的に話しに来てほしいと栗原さんは話す。昼休みと中休みの時間、栗原さんは校内に設置された相談室を開放し、子ども達が自由に出入りできるようにしているそうだ。