妊娠にまつわることは、そもそも人に話しにくい

マイさんの話を聞く小酒部さやかさん
マイさんの話を聞く小酒部さやかさん

 この構図を打開するためには、上司の無理解だけでなく、妊娠にまつわることがそもそも話しづらい雰囲気を変える必要がある。

 マイさんの話で印象的だったのは、繰り返し「妊娠しないでね」とクギを刺されていたことである。

 採用条件に「妊娠するな」と挙げる会社は非常にまれだが、採用が決まってから「妊娠するな」と強要する会社は実は想像以上に多い。某大手旅行代理店の経営者が内定式で、真っ先に言ったことは、「女性社員のみなさん、妊娠しないでくださいね」だったという。

 悲しいことに、妊娠が禁則事項であるかのような雰囲気が労働現場に蔓延している。それが彼女達を孤独に追い込む。優秀な人ほど仕事を多く負担し、そして誰にも相談できない袋小路に追い詰められ、場合によっては流産(中絶した人もいる)へと至ってしまうのだ。

 もう一つ、今回の話からよく分かることは、女性が仕事を辞めることは、まったくもって簡単ではないことだ。当然、仕事を続けたいから辞めたくないという人もいるだろう。しかし、責任感から辞められない人も多く、また仕事が唯一の社会との接点になっており、辞めることができない人もいる。

 女性も、男性と同じくらい職を失うことが怖い。いや、女性の転職がかなり難しいことを考えると、ある意味、男性以上に職を失うことが怖いともいえるかもしれない。

 「夫に養ってもらえばいい」と人は言うかもしれない。仕事を続けようとする女性はワガママだと。

 しかし、マイさんを見てもらえば分かるように、仕事は現代においては、人が社会とつながるための、ほとんど唯一の方法である場合もあるのだ。そして、一度仕事を失ってしまうと、取り戻すことは極めて困難になる。それだけではない。夫の会社がいつまでも存続する保証もないし、結婚生活自体が続くかだって分からない。女性はセーフティーネットとして、仕事からできるだけ離れないようにと、不安を抱えて生きている。

 分かりきったことだ。男性と同じように、女性にとっても仕事は命綱なのだ。