NTTコムウェアのキャリア支援の取り組み

 NTTコムウェア・ダイバーシティ推進室が社員に行う研修のうち、時間制約を持つ社員に関わるものとしては、「産休前面談(個別対応)」「育休者向けセミナー(子連れ参加可能)」「復職者向けセミナー」「介護セミナー」の4つ。今回は加えて課長向けにも研修を実施しました。職場の円滑なコミュニケーションを促すために、会社生活を送るうえでありがちな一つ一つの出来事に対する“課長の気持ち”と“部下の気持ち”を並列に並べた「コミュニケーションハンドブック」(NTTグループ作成)を活用するなど、風通しが良く、社員が意欲的に働きやすい環境づくりを積極的に進めています。

 今回、全国800人近い課長を対象に行われた「ダイバーシティマネジメント研修」は、課長自らの声から生まれたもの。

NTTコムウェア総務人事部HCMセンター所長・ダイバーシティ推進室長の深松清人さん
NTTコムウェア総務人事部HCMセンター所長・ダイバーシティ推進室長の深松清人さん

 「育児休職や介護休職を取得するときに、まず直接的に相談する相手は課長。プレイングマネジャーと言われるように、今の課長職は仕事量が多く、内容も多岐にわたります。そんな中で、『育児も予測できないことが多いが、介護はさらに先が見えない』と多くの管理者が不安を感じており、昨年度から時間制約社員を部下に持った場合のマネジメントをテーマにした研修を一つの柱としました」と深松さんは話します。

 課長自らの介護に関する理解促進希望などから企画内容が深まり、今回のプログラムへと広がっていきました。介護+育児の要素も加えた約3時間のグループ研修。参加者の反応はどうだったのでしょうか。

 「人によって反応は違いますが、おおむね好意的な印象で毎回終わっています。もちろん、実際に直面したら理想論では立ち行かないと思っている人がいるかもしれません。でも、全体的にみんなで取り組んでみようという前向きな声が多いですね」

 男性管理者が多い職場の場合、育児だけに特化してしまうと、『自分とは関係がない』『子育ての大変さは忘れてしまった』という話になりがち。一方、介護は今後、管理者自身も含めて、確率やリスクが高まることに漠然とした不安を感じている人が多く、いつかは起こり得る自分ごとという意識をより強く感じる傾向があります。

 「育児よりも介護はケースが様々ですが、時間制約という意味で共通項がかなり多い。今後、何らかの事情で職場の2人が一気に抜けるということも十分あり得る中で、生産効率を上げてやり方を変えるだけでは立ち行かない場合があります。では、人事を動かすか。そうはいっても、人事が全社的に配置を動かせるかという現実的な問題もあります。いつ起きてもおかしくない問題と向き合い考える機会をつくることで、職場がより団結し、支え合う意識が高まれば」と深松さん。

 現在高校生の父である深松さんは、子どもが乳幼児だったころの数年間、地方で働く妻と別居しながら、共働き育児生活を送っていた経験を持ちます。

 「月に1度程度、東京から妻のいる青森へ飛行機で行き、季節ごとの子どもの保育園行事に駆けつけるなど、綱渡りな家族の歴史がたくさん(笑)。遠距離での出産・子育ては夫婦の力で乗り越えられるのか、キャリアと子育ての間で悩みましたが、当時、妻がその思いをワーキングマザーの掲示板に投稿したところ、同じような悩みを持つ遠距離夫婦の方が何人もいて、『うちが特別なわけではない』という思いに救われました。『自分だけが特別ではない』という思いは、同じ悩みを持つ人同士で励まし合い、頑張ろうという意欲につながります。ダイバーシティ推進室長という役割は、そんなご縁から私に巡ってきたのかなと感じています」

 現在約30人の部下を束ね、そのうち3人が時間制約のある短時間社員であるという深松さん。自ら在宅勤務を試験的に実践するなど、新しい働き方を、自身の経験を基に研修の場などで提案しています。

 「NTTコムウェアは、安全・安心、世の中を支えるという仕事をソフトウエアの観点から担っていることから、平時のうちからしっかりと盤石なサービスを提供しなければいけません。外から見ると手堅く盤石な企業に見られがちですが、実際中で働く人間は、『作っていこう、変えていこう』というどこまでも熱い社風。業界的に業務の繁閑の差が大きいので、そこをどう乗り切るかが課題です。情報通信の分野で切磋琢磨している中で新しいものにチャレンジしていくのは、物ではなく人。完璧ではなくても上の役職者がちょっとでも変わり、その効果がこれから少しずつ出てくると、部下の皆さんが『うちの会社、変わったな』と思ってくれるはずです。

 本音で語れる場は意識してつくらないと職場ではなかなかできないので、お互いの事情に共感しフォローし合いながら、正面から取り組むことで、最後は一人一人が実感を伴って良くなったねとなるかどうかが大切。ダイバーシティということに関して言えば、直接的に何か取り組まなくても実感もできているし、それが当たり前という状況が来ることが最初の目標です」