起こり得る事態を想定した、具体的なシミュレーション

 昼休み後、後半はチームディスカッション。「職場の主力メンバーが介護でしばらくの間会社を休む」「育児を抱え行き過ぎた配慮により、仕事にやりがいを失って異動を希望している」どちらかの事例を選び、短期的、長期的視点から具体的な対応を導き出していきます。

 当事者や発生した事態に加えて、関わる職場のメンバー、職場の状態、管理者自身、体制図(管理者の所掌範囲)など、細かく場面設定がされているのがポイント。短期的には、

短期的視点からの取り組み
☆介護

●「業務の見える化と棚卸し。手持ちの案件を一つ残らず吐き出してもらう。各所調整を図るとともに全体で情報共有。また、当事者をどうケアするか。社内事例や自治体含め事例を調査し、総務人事部と連携。制約下においてどんな働き方ができるかと業務命令にならない程度に案内する」

☆育児
●「人によって感覚や大事にしていることが違い、チームみんなの思いがすれ違っている状況。やりがいのある仕事とは何か、当事者の真意を具体的に確認し、管理者の考えをきちんと伝える。上司の視点から突発的な休みへの不安を話しつつ、そのうえでどうチームの一員としてやっていきたいのかも確認。負担が集中する社員も交えて、思っていることを話し合う」
●「腹を割って当事者の状況を聞く。親や夫、保育園の状況がどうなっているか、どういうタイミングでどのように働けるかを整理。本人にとって働きやすい環境と希望が、現在の状況下で具体的に実現可能かを話し合うとともに、負担がかかるメンバーへのフォローアップも必要。業績を上げることで、各メンバーにフィードバックをする」

 という対処法が各グループから挙がりました。また、中長期的な対応として、

中長期的な視点からの取り組み
☆介護

●「中長期となったとき、休日出勤や残業が続くなど、残った人への負荷も大きい。チームで行える対応はしたうえで、部全体としてどのように体制強化をしていくか検討する必要がある。一方、介護は精神的、体力的にも負担がかかり、当事者は介護で手いっぱいで情報収集ができない状況。社内制度を確認し情報共有するとともに、いつでも戻ってこられるような雰囲気をつくる。
●「介護・妊娠・出産も含めて残った各メンバーの状況を把握しておくとともに、仕事の見直しをする。誰が何をしているか、把握できるようチームメンバー同士で各作業の見える化も必要。介護が長期化する場合は、在宅勤務をするか、介護に専念するかも決めていく必要がある。併せて復帰プランのフォローも行っていく」

☆育児
●「育児の先輩の経験から、重要なアドバイスがもらえる場合も。中長期的には、時間制約がなくなったときに、本人のキャリアを今後どうしていくかという意識づけも重要」
●「当時の上司から『今どれだけできるか』、半年に一度聞かれたのは良かった。こまめにヒアリングしてもらえると、それをきっかけにコミュニケーションができ、より実態に即した働き方ができる

 研修では、時間制約を抱える社員が働きやすい環境の要素として、以下の5つのキーワードが挙げられていました。

<ダイバーシティマネジメントを支える5つのキーワード>

□復帰後、仕事ができるようになるカリキュラム設定
□モチベーション維持(チーム体制・目標設定・自己啓発研修など)
□柔軟に働きやすい制度
□職場以外の環境(施設やサービスの利用・家庭の協力など)
□世の中の動きの把握

 研修の最後には、各自が職場でこれから取り組むべきことを「宣言シート」に書いて、全員がイケボス(イクボス+ケアボス)宣言。学びを実際の行動へとつなげます。

 講師を務めたダイバーシティ推進室長の深松さんが、「この研修は、全社を挙げてコミュニケーションを良くしていこうということで行っています。NTTコムウェアに限らず、世の中の多くの課長さんが悩んでいる現状。北海道から九州まで800人以上がみんなで、何かちょっとでも意識や行動を変えることで、会社が変われるきっかけになるのではないかと思っています。日ごろの仕事の中では孤独になりがちだと思いますが、皆さん仲間ですので、これをきっかけにお互い支え合いながら良くなるきっかけになればうれしいです」と締めくくる言葉に参加者達は強くうなずき、会場は大きな拍手に包まれました。