着け外しがいらない、内蔵型のインテグレーテッドブースタークッション

 チャイルドセーフティ開発に注力しているボルボでは、「事故調査隊」もいて、ボルボ車が関わるスウェーデン国内での自動車事故を調査し、その結果を1970年代初頭から蓄積しています。こうした実際の事故から得た情報をもとに、スウェーデン・イエテボリにあるテストセンターで、実際の交通状況に基づいたチャイルドシートの試験を行い、継続的に改良しているそうです。また、妊婦や赤ちゃん、子どもなど、様々なダミー人形は多数のセンサーがある精巧なもので、これらを使った衝突テストや、コンピューターシュミレーションも実施しています。同社は、「2020年までに新しいボルボ車での交通事故による死亡者や重傷者をゼロにする」というビジョンを掲げています。

 同社のチャイルドセーフティに関する調査研究は、すべての製品に反映されています。例えば、すべてのボルボ車で、ISOFIX固定ポイント(ワンタッチで差し込むだけでチャイルドシートをがっちりと固定できる、チャイルドシート装着用の国際標準規格)が採用されており、助手席にはエアバッグ・カットオフスイッチがあります。

 もちろん、後ろ向きのチャイルドシート(生後9カ月から6歳まで。3~4歳までは使用を推奨)も販売していますし、インテグレーテッドチャイルドクッションを装備できる車もあります。

インテグレーテッドチャイルドクッション。チャイルドシートの付け外しがいらない(車種はXC90)
インテグレーテッドチャイルドクッション。チャイルドシートの付け外しがいらない(車種はXC90)

 インテグレーテッドチャイルドクッションは、必要な時にいつでも利用することができる内蔵式のチャイルドクッション(車種により高さ調整も可能)。内蔵式なら、使わないときには、普通のシートになりますし、いちいち着け外しもありません。祖父母の車にチャイルドシートがなくても、インテグレーテッドチャイルドクッションを装備していれば安心です。

インテグレーテッドチャイルドクッションを使えば、シートベルトをきちんと着けられる(車種はXC90)
インテグレーテッドチャイルドクッションを使えば、シートベルトをきちんと着けられる(車種はXC90)

 どこでも持ち運びができ、使わないときはしまえるインフレータブル(空気注入式)のチャイルドシートのコンセプトモデルも発表しています。目的は、いつでも使ってほしいからです。

持ち運びできるインフレータブル(空気注入式)チャイルドシートのコンセプトモデル
持ち運びできるインフレータブル(空気注入式)チャイルドシートのコンセプトモデル

 さらにボルボは、空気にもこだわっています。子どもが車に乗るのをいやがったり、車内でぐずったりする要因の一つであるシックカー症候群(新車のプラスチック部品から発生する化学物質で発生する頭痛やくしゃみなどの不快なアレルギー症状)を防ぐために、すべての新しいボルボ車は、リモコンでドアロックを解除すると自動的に換気がスタートする車内自動換気システムを搭載しています(化学物質の揮発がなくなる4年後に自動的に解除)。事故を防ぐための、オートブレーキや死角にいる車を知らせてくれる機能をはじめとする「インテリセーフ」テクノロジーを全車に標準装備していることも、ボルボ車の特徴です。

 ボルボやロッタ博士、そして益田さんが後ろ向きチャイルドシートについて活動を行っているのは、「ボルボでなければ、ボルボのチャイルドシートでなければ安全ではない」ということではないといいます。「ボルボ車にお乗りでなくても、我々の研究から得たことは、こどもたちの安全のために、すべての大人の方に知っていただきたい。知っていただく意味があると考えているから」(益田さん)

 こどもを守れるのは大人だけ。「できるだけ長く後ろ向き」「成長に合わせて」「どんなときにも」。この3つを忘れないでください、と益田さんは言います。チャイルドシートを買うとき、そして子どもとドライブするときは、ぜひ思い出してください。

(文/山田真弓 写真/菊池くらげ)

チャイルド・セーフティ