レッジョ・エミリアの教育者シモナ・ボリアリは、不規則で変化に富んだ「自然」こそが、子どもの想像力を刺激する最高の遊び場だと語っていました。

 映画には登場しませんが、幼児教育の専門家で玉川大学教育学部・乳幼児発達学科の大豆生田啓友(おおまめうだひろとも)教授によれば、多様な環境の中での主体的な「遊び」を通じて、何かに興味を持ったり没頭したり、人と関わったりすることが幼児教育の観点で重要だといいます(週刊東洋経済2015年10月24日号P.64)。遊び方の決まった玩具やゲームよりも、自主性と創造性を発揮できる能動的な遊びが可能な「自然」が子どもの成長発達をより刺激するという主張には多くの方が納得されるのではないでしょうか。

勇気づけが子どもの脳のシナプスを活性化させる

 乳幼児の健全な成長にとって有益な3つ目の要素は「愛情」です。幼児期の体験が脳や行動の発達に与える影響を長年研究してきたチャールズ・ネルソン(ボストン小児病院)によると、幼児期に周囲から手厚いサポートを受けられた子どもほど、健康で生産的な大人になる可能性が高いといいます。

 子どもの脳を発達させるシナプス結合は0~3歳の間に特に活発で、脳の約80%がこの時期に完成するといわれているそうです。ハーバード大学児童発達研究所の所長ジャック・ションコフによると、このシナプス結合をもっとも活性化させるのが、大人との愛情ある交流なのだといいます。

 子どものありのままの状態、不完全な状態を認め、親の期待や価値観を押し付けることを控えて、子どもを無条件に信頼して関わり続ける。――このような無償の愛の発露こそが勇気づけの本質であることを、これまでのコラムで伝えてきました。「勇気づけのアプローチが、子どもの脳のシナプス結合を活性化させ、その結果、健康で幸せな人生の土台作りに貢献する」といえるのかもしれません。