長時間労働している人のほうが、はしごから落ちるべき人

小池 例えば、育児休業を取得する男性が増えてきたといいますが、実際の数字はというと3%にも満たないわずかな割合ですね。少しは理解は広がっているかもしれませんが、そのスピード感たるや非常に遅々たるものだと思います。男性が「子育てのために今日は早く帰ります」と言った日には、組織の中のはしごから転がり落ちてしまうというのが現状ですね。

 でも私は、「子育てをしながら仕事もできる」のがいいと思うし、本来の姿だと思うのです。であるならば、仕事の仕方は一体どうなのか、真剣に見直さなければいけません。現に、日本人はこんなにも長時間労働をしているのに、GDPが伸びているわけでもなく、日本から画期的な新商品が生まれたり、技術革新が世界を席巻したりしているかというと、むしろ逆です。「長時間労働では報われない」ということが結論として明らかになっているわけです。

 単に長く働いているだけの人のほうが、はしごから落ちるべき人である。それくらいの意識の転換をすべきときを迎えていると思います。

 つまり、子育てと仕事の両立に関する問題は「働き方」そのものを変え、子育てがしやすい環境へ改善していかないと解決しないと私は考えています。これは男性も女性も同じ、社会全体が共有すべき問題です。ベースの意識を変えないとダメです。

「20時消灯」を都庁で実施!

小池 ということで、都庁でも10月14日から終業時間を20時とし、その時間になると原則消灯するルールを実施しています。まぁ、初日は一度消灯の後、もう一度明かりがついてしまっていたようですが(笑)。

―― 急には切り替えられませんからね。

小池 えぇ、もちろん急には無理なんです。しかしながら、大きな意識転換が必要だと心を決めて、「隗より始めよ」ですぐに実行を決めました。

 でもね、 本当は20時消灯でも遅いくらいで、私は18時消灯に決めたかったんですよ。でも、もともとの提案が22時消灯だったもので……まずは20時から始めました。

 霞が関でも就業時間を「ナイン・トゥー・ファイブ」なんて言ったりしますが、この「ファイブ」は夕方の5時ではなくて、早朝5時のことなんですよね。どうして皆さんが文句を言わないのか、私は分からないんです。