日経DUALの「夫婦関係と離婚に関するアンケート」では412人中298人、つまり7割以上の人が「これまでに離婚したいと密かに考えたことがある」と回答しました。

 その理由も様々ですが、今回は「子どものための優しい離婚講座」として、実際に離婚をするにあたってのノウハウを、小杉俊介弁護士、徳原聖雨弁護士から教えてもらいます。

 前回は、「離婚の基本について流れの概要」「弁護士の仕事への誤解」「弁護士に相談する前の対策」そして「調停」という4つの視点からまとめましたが、今回は読者アンケートから抽出した具体例を挙げながら、「離婚事由として認められるかどうか」を確認! 親きょうだいや友人達が「それは裁判で有利に働く」「慰謝料をもぎ取れる!」「養育費はがっちり取りなさい」などと励ましてくれたとしても、離婚を申し立てる理由が法的に「事由」として認められるかどうかは、また別問題なのです!

【子どものための優しい離婚講座 特集】
第1回 読者の7割が「離婚を考えた」 夫婦の実態調査
第2回 意外と知らない離婚イロハ 弁護士相談、調停、別居
第3回 「リコン」の三文字 パンダ親父にも意外と身近?
第4回 教えて弁護士さん「これって離婚できますか?」 ←今回はココ
第5回 親権の行方、ありがちなトラブル 養育費の現実
第6回 離婚or別居 子への影響を考えて親ができること

離婚を考え始めたら日記を継続的につける!

 結婚後、特に子どもが生まれてから発覚することが多い夫婦間のトラブル。読者アンケートでは離婚を考えたことのある皆さんが、様々な要因を具体的に寄せてくれました。

「家事・育児で常に不公平さを感じる」
「子どもが生まれても、夫だけ週末も自分の趣味や習い事に時間を使う」
「モラハラされる」
「勝手に仕事を辞めてしまった」
「急に帰りが遅くなった」
「夫(妻)が暴力をふるう」
「そわそわしている。浮気かも」
「セックスしたくないのに強要される」
「セックスレスになり、二人目がほしいといっても無視される」
「産後、寝室を別にされた」
「家計のための生活費を一切出してくれない」
「しつけという名の虐待がある」
※日経DUALによる読者アンケートより抜粋(2016年9月15日~10月5日実施)

 「協議離婚」でまとまる話であれば、こうした理由を中心に大人の話し合いをすればいいかもしれません。でも、ひとたび調停離婚や裁判離婚に踏み切るとなると、離婚に至ったやむをえない原因を立証するのが難しいケースも少なからずあります。

 第2回記事で紹介した「離婚事由として認められる主な項目」とは、「不貞行為」「重大な精神病で回復の見込みがない」「悪意の遺棄」「行方不明(3年以上の生死不明)」「その他、婚姻を継続しがたい重大な理由(長期間の別居、お金を一切入れない、暴力などDV含む)」。相手の非を主張し、離婚に踏み切るためには具体的な証拠が重要なポイントになってきます。

 離婚を具体的に考え始めていたなら、今すぐやっておくべきこと。それが、「日記をつけること」です。

毎日もしくは最低でも2日に1回、継続的に日記をつける

 徳原聖雨弁護士は「日記が証拠として使えるのかどうか、疑問に思うかもしれませんが、総じてどの事由についても実は有効な証拠になります」と言います。ただし、「継続的にほぼ毎日つけている」ことが条件。例えば1年間つけているといっても頻度が1週間に1度などでは証拠になりにくいのですが、1週間でも毎日こと細かに書いていれば信頼性が認められる可能性が出てきます。ほぼ毎日が望ましいのですが、「2日に1回は書くようにするといい」と徳原弁護士。

 また、内容は相手の疑わしい行動、相手が自分に対して行った身体的暴力や精神的暴力(暴言や無視するなど含めて)、子どもへの虐待行動などの具体的な事象の記録だけでもいいですし、その他「この発言、行動が嫌だった」という自分の思いも書いておくといいと徳原弁護士は勧めます。今すぐ日記をつけ始め、言語化することで、見失っていた自分の心の声や内なるモヤモヤも整理できるかもしれません。

 なお、デジタルは改ざんできるという理由であまり勧められませんが、手書きがどうしてもつらい場合は自分宛てにメールを出すなど、始められる時点から何らかの手段で書き記しておいたほうが良さそうです。

 次ページからはより具体的に、読者の皆さんが離婚したい理由の中で挙がった声を抜粋し、その例が実際に離婚事由として認められるかどうかを徳原弁護士、小杉弁護士に聞いていきます。

<次ページからの内容>
●性格や価値観・教育観の不一致…は認められない!?
●性生活のギャップは「程度」と「期間」で認められる場合も
●ギャンブル、借金は離婚を成立させる決め手になりうるか?
●浮気はズバリ、証拠次第! でも風俗は?
●DV、モラハラは日記や診断書で証拠づくり