難関校の入試問題に初見の問題が多いのはなぜか?

 「難関校を目指す子というのは、小さいころから覚える勉強ばかりしてきた子という印象を持っている人は多いと思いますが、そうではありません。確かに、塾のテキストの範囲は最低限覚える必要はあるでしょう。けれども、難関校の入試は、それらの知識だけでは太刀打ちできません」

 「知識は塾で習う範囲でもいいでしょう。でも、それが『どのような経緯で発見されたのか?』『それを使うとどんなことができるのか?」など、テキストに書かれていること以外にも興味が持てないと、麻布のような学校には入れないのです」

 では、麻布の入試問題はどんなものが出題されるのでしょうか?

 「麻布の入試問題では、他の教科もそうなのですが、特に理科では塾で習った内容がそのまま出題されることはまずありません。『こんな問題見たことないぞ!』といった初見の問題が多く、しかもパッと見て、とても面倒臭そうな問題ばかりです。こうした問題を一つひとつ順を追って考えていくには、『へえ~、そうなんだ』という知的好奇心と『僕なら絶対にできる!』と思えるような自己肯定感が必要です。これらは、幼少時期から様々なことに触れながら、小さな知的な驚きや、小さな成功体験を積み重ねて育まれていくものです」

 「一つの知識だけでは解けない難問を解いていくには、周辺の知識にも気づく能力が必要です。物事を一点から見るのではなく、俯瞰的に見る力を持っている子は、『ああでもない、こうでもない』と、自分が今持っている知識の引き出しを出したり引っ込めたりしながら答えを探していきます」

 「この考える力こそが難関校が求めているものなのです。そして、こうした考える力がなければ、おそらく入学後の授業にはついていけないでしょう。つまり、難関校では真のアクティブ・ラーニングの授業ができる子を入れたいと思っているのです。そして、その能力があるかないかを見極めるために入試があるのです。入試問題には学校のメッセージが込められているとよくいわれますが、これもその一例です」

 アクティブ・ラーニングを意識した入試問題を出す学校は、他にもあります。主な学校は開成、桜蔭、渋谷幕張、渋谷渋谷などの難関校です。また、公立中高一貫校の「適性検査」もそれに該当します。

 また、近年、アクティブ・ラーニング系の入試を実施する中堅校、またはそれ以下の学校は増えています。

 「こうした学校は、公立中高一貫校の併願校の受け皿になっていますが、受験する際には、実際にその学校へ行き、どんな授業が行われているのか見ておくことをおすすめします。その学校がアクティブ・ラーニングを大きくうたっているのであれば、その本質を見極めて受験するか否か判断するようにしましょう」

(撮影/鈴木愛子)