現在、クラウドソーシング大手・ランサーズのビジネス開発部・部長を務める幸村潮菜さん。1人の息子を持つ共働きママでもある幸村さんには、立ち止まることなく挑戦をし続け、「気づいたら、ベンチャーばかり5社も経験することに」と屈託なく笑う逞しさに心惹かれます。「まるでブルドーザーみたいな人だね」と称される幸村さんの前では女だろうが、男だろうが、ママであろうが、独身であろうが、そんなことはどうでもいいことに成り下がってしまう不思議さを感じます。その輝かしいキャリア変遷の中でどのように「仕事と育児の両立」をしてきたのでしょうか。じっくり聞いてみたいと思い、取材してきました。

幸村潮菜さん
ランサーズ ビジネス開発部 部長

1974年生まれ。大学卒業後、NOVA入社。2003年5月、ECコンサルタントとして楽天に入社。同社営業統括部部長などを経て、2012年ロックオンに転職。同時期にイノーバを共同創業。2015年ランサーズ入社。現在に至る。

楽天に転職後、慶應ビジネススクールへ 「もっと経営全体を見渡したい」

幸村潮菜さん
幸村潮菜さん

日経DUAL編集部 まず、これまでのキャリアの経歴を教えてください。

幸村潮菜さん(以下、幸村) 大学卒業後、上場したてのNOVAに一期生として入社し、4カ月後には外国人、日本人講師を束ねるスクール運営を任されました。その後、13教室の運営管理をする地区マネジャーをはじめ、売り上げ管理、トラブルシューティング、スタッフマネジメント、採用教育を経てマネジメントの大切さを学び、これが経営の仕事に興味を持つきっかけとなりました。

 EC業界が黎明期のころの楽天に、ECコンサルタントとして転職し、数年で事業部を任される立場になりました。そのころから、「もっと自分で経営全体を見てビジネスできる立場になりたい」と思うようになり、慶應義塾大学ビジネス・スクールに通うことにしました。卒業後は楽天に戻り、全社のグローバル戦略に紐づいた当時の注力事業、楽天ブックスに携わり、競合との差別化戦略の立案や事業推進を行う役割をするポジションまでたどり着くことができました。

顧客トラブルに深夜まで対応中、破水しタクシーで病院へ

―― 別サイトになりますが、幸村さんのことを書いた「深夜のオフィスで破水した伝説の女」というタイトルの記事が話題になりましたね。

幸村 記事タイトルが一人歩きして、炎上したみたいですが、ギリギリまで働いて破水したわけでは決してないんです。あのころ、楽天が始まって以来の顧客トラブルを抱えており、その対応で稼働時間が増えていたのは事実です。東日本大震災を挟んだタイミングだったこともあって、エレベーターが使えず、階段の上り下りをしていたことも影響したと思います。

 もとから産まれる直前まで働こうと思っていましたし、もちろんトラブルには責任を持って対応したいというプロ意識もありました。22時くらいにPCに向かって作業をしていたら何か変だな、と。

 初めは尿漏れかと思い、トイレと座席を行ったり来たり。そのうち、椅子まで濡れてきたので「これはまずい」と思ってタクシーを呼びました。タクシーの運転手さんとおしゃべりしながら病院に電話したら「救急車で来てください!」って怒られました。

 その後、入院することになって陣痛止めを打って寝たきり生活を送っていたのですが、5日目には陣痛が始まって。分娩室に運び込まれて生まれるまで47分! 

―― 今、ドヤ顔しましたね(笑)。