キャリアが停滞したとき、「何か解決策はないか」と徹底的に探る

 会社が大きくなり組織が大きくなることは決して悪いことではないが、一人ひとりの業務や裁量の範囲も細分化してしまった。過去に強烈な成長体験を味わってきた彼女達にとって、制度の充実がもたらした安定はいつしか物足りなさへと変わったということだろう。

 楽天にいた時期には、何よりもスピードが優先され、短期間で結果を出すために目標から逆算して方法を導き出す癖が身に付いたと語るママ達。子どもを持ったことによるキャリアの停滞感があっても、そこで立ち止まって腐心するよりは何か解決策はないかと徹底的に探る。以下は、彼女達の口から飛び出した、仕事に関するフレーズだ。

「業務をコントロールしやすい管理職に手を挙げる」

定時に帰っても絶対文句は言わせないほど生産性の高い仕事をして、周りを巻き込む」

「誰がやってもいいことは徹底してアウトソーシングする」

「『電話は他人の時間を奪う』という理由からメールのコミュニケーションがよしとされていますが、電話のほうが早い場合もある。他人に気を使っている暇はない」

「決められたリソースの中から結果を出したり、あれこれプランニングしたりすることが大好き。納期の決まった仕事は、何かあったときに備えて常に前倒しで段取り力を高めていく

「提案するときはABCの3つのパターンを用意したうえで、『私はAがいいと思う。なぜならば……』と話を始めれば、たいてい自分の持っていきたい案に決まる」

 合理的な仕事術はもちろん家庭でのマネジメント術にも活かされる。

「家庭も仕事も要はマネジメントだということに尽きます。今の自分のキャリアは、そのトータルの結果。ママ業は言ってみれば二部署のマネジメントを同時進行しているようなもの。子どもが何人かいて、習い事やPTAなどのスケジュール管理をしたうえで仕事をしている。そんな働くママのタイムマネジメント力は役員秘書とかと同じくらい優秀では? ママ達はもっと自信を持ったほうがいい」

「一度きりの人生。やりたいことは全部やりたいし、挑戦している姿を子どもに見せたい。お母さんが楽しそうにイキイキしていると家庭も明るくなるから、私は自分の人生を大事にして、諦めない」

「『女性の生涯成長率には限界がある』と唱えている学者がいます。世界的なデータによれば、人の成長は35歳から緩やかに下降するのだとか。でも、私はその常識を打ち破りたいし、そのファクトにあらがい続けたい。私は死ぬまで右肩上がりで成長してみせる。それを身をもって証明したいんです」

 「成長! 成長! 成長!」――。成長への渇望感は今でも彼女達の体に染みつき、紛れもなく彼女達の行動や選択のコアを形づくっている。会社の成長ステージの変化と個々人の成長のフェーズをすり合わせることの難しさを垣間見た気もするが、彼女達の働き方や人生のポートフォリオの描き方は紛れもなく「楽天魂」の継承者ならでは。

 「卒業」後も、ママ達の挑戦は終わっておらず、成長も止まっていない。

(ライター/砂塚美穂、撮影/稲垣純也)