学力テストの結果は社会経済条件に左右される

 先月、今年度の全国学力テストの結果が公表されました。各学校(地域)は平均正答率に一喜一憂し、全国平均(県平均)と比して高ければ教委から褒められ、逆なら叱られる。こういう光景が全国各地でみられることでしょう。

 しかし、図3のような現実があることを思うとき、学力テストの結果が振るわないことの原因を、教師の指導力不足だけに帰すことができるでしょうか。子どもの学力はまぎれもなく社会的規定を被っているのであり、それを知らずして、結果が芳しくないことを闇雲にとがめるのは、現場の教師を疲弊させるだけです。

 上記の散布図をみると、足立区は回帰直線よりもかなり上にあります。地域の大卒人口率から期待される水準よりも、高い結果を出しているわけです。地域の条件を考慮するなら、この区は「がんばっている」と評されます。不利な家庭環境の子どもに対する個別指導など、「下」に手厚い実践を行っているようですが、その成果といえましょう。

 こういう「草の根」の取り組みも評価されねばならない。そのためには、学力テストの結果を読むに際しては、各学校(地域)の置かれた社会経済条件を考慮する必要がある。教育行政の方々に、このような視点を持っていただきたいと思い、地域間で大卒人口率がこんなに違う、というデータをお見せした次第です。

 地域の大卒人口率や平均年収などの指標から、学力の期待値を出し、それを実際の結果と比べてみる。後者が前者よりも高い地域を「がんばっている」と評価する。こうした分析がされてもよいでしょう。第23回の記事では、その作業を実際にやっています。ぜひ、ご覧いただければと思います。