窓口負担0円でも実際は医療費がいくらかかっているか知ることが大事
実際、医療費がいくらかかっているか、ご存じでしょうか? 例えばNICU(新生児集中治療室)であれば、退院するときに医療費の負担額が書かれたレシートをもらうことでしょう。実質負担は0円ですが、お子さんによっては1000万円ほどかかっているのが分かるはずです。NICUを出た親御さんからは「ありがたい」という声を多く聞きます。
毎回の入院や通院で、どのくらい費用がかかっているのかに目を向けてください。医療機関ではぜひ明細書を出してもらってください。厚労省では推奨しています。
もちろん、「無料だから」と虫刺され後の薬や保湿剤を、家族の分までもらってくるというようなことをしていると、この制度は崩壊します。
大切な限りある医療費をどのように使うべきか考え、必要な医療に必要なお金を適切に使っていただきたいのです。「必要のない受診はしない。必要のない薬はもらわない。そしていざというときは、きちんとかかる」。これを理解するには教育が必要です。
どんなときに病院へ行くべきか。医療費は、どこが、いくら負担してくれているのか。まずは子どもを持つ親が子どもの医療のかかり方を理解することで、この親世代・子ども世代が高齢になったときに、適切な受診行動をするようになり、この課題は解決に近づくものと思います。何もしなければ、知らないまま、何も変わらないままではないでしょうか。
以上、小児の医療費の問題点についてまとめてみました。自治体を責めているわけでも、国を責めているわけでも、親や医療者を責めているわけでもなく、それぞれができることをきちんと行っていくことこそが大切だと思います。
医療費の無償化をどんどん推進すればいいわけではありません。教育・啓発とセットで実施する必要があると考えます。数年後、数十年後では、子どもを取り巻く環境は変わっていることでしょう。その時々で、子どもの人数や医療の現状に見合ったものに、制度が追いついていくようにと願います。
ただ、「困っている人に届ける」、その点だけは変わることなく、大切にしなければいけないと思うのです。
(構成/中島夕子 イメージカット/鈴木愛子)