貧困で健康保険未加入、助成が受けられず受診できないケースも

子どもの貧困問題

 現在、子どもの貧困率は、16.3%、実に6人に1人です(平成24年国民生活基礎調査より)。

 また、ひとり親世帯の貧困率は、54.6%です。「半年間で経済的理由による受診の中断があった」と回答された開業の診療所は、34.9%に上りました(全国保険医団体連合会会員調査 2016年3月31日発表)。

 子育て世代に直接関係のあるデータではありませんが、「過去1年間に経済的な理由で家族が必要とする食材が買えなかった経験がある」と回答した人は14.8%。「過去1年間に必要だと思うのに、医療機関に行けなかった経験がある」と回答した人は14.2%でした。そのうち、公的医療保険に加入しておらず、医療費の支払いができなかった割合は2.7%、公的医療保険に加入していたが、病院や診療所で医療費を支払うことができなかった割合は15.3%に上ります(数字は20~64歳、国立社会保障・人口問題研究所 2013年7月概要発表)。

 ある市立病院で、10年間のうち虐待で亡くなった子どもの数は10人でした。親に一点だけ共通していたのは「非正規雇用である」ということです。

 明日の食事に困る人が少なからずいる状況で、健康保険の支払いが難しく、結果、医療費の助成を受けられない方もいるということ。金銭面での困窮は、子どもの命に直結することを忘れずにいなければならないと思います。

負担が大きい国民健康保険料の問題

 40代の夫婦+子ども2人の場合で、収入が200万円の場合、国民健康保険料は最も保険料が高額な場合で46万2130円です(東大阪市の場合)。200万円の収入で子ども2人を育てながら、この額の保険料が払えるのでしょうか?

 同じ条件で社会保険料の場合、個人の負担は3分の1、4分の1になります。国民健康保険料が払えず、医療費の助成が受けられないご家庭は多くあります。また、「低所得者層の子どものほうが健康状態が悪い」という研究報告も出ています(阿部彩 2012『健康と社会』Vol.22 No.3)。

必要なワクチンが打てない問題

 定期接種のワクチンが増えてきているとはいえ、任意接種のワクチンにはおたふくやロタ、RSウイルスなど子どもの病気を予防するうえで、大切なワクチンがあります。医療費助成の話とは別になりますが、予防接種の助成も、進んでいる自治体とそうではない自治体と差があります。

 ロタワクチンの接種を希望しながら、費用が高いことで断念し、お子さんが命を落としてしまったケースもあったと病院からの報告があります。

 また、早産児や慢性疾患、先天性疾患を持つ赤ちゃんには、重症のRSウイルスを予防するシナジスを接種しなければなりません。季節にもよりますが、6カ月以上毎月の接種が必要です。これは健康保険の対象ですが、医療費が無料ではない自治体、あるいは所得制限が低く設定されている自治体ですと、支払いが非常に重くのしかかっている場合も多くあります。

 このシナジスの接種は、1回3万~5万円するものです。親御さんの負担は20万円にも上ります。注射の金額を聞いて接種を断念される方が多くいるとの報告もあります(http://aomori-nicu.jp/4066 青森県立中央病院 成育科ブログ)。

 親御さんのお気持ちはいかばかりかと推測します。「ワクチンを打って病気からわが子を守りたい」という気持ちがあっても、この重い負担を前にちゅうちょされる親御さんが多くいることは、とても残念でなりません。必要なワクチンは全額公費で受けられること、そしてワクチンによる健康被害が生じた場合には十分な補償制度を、と願います。