子どもを産んでから、より自分自身に向き合うようになった

羽生 素晴らしい。最近はどういうスケジュールで過ごしていらっしゃるんですか?

眞鍋 仕事がない日は、朝7時くらいに子どもと一緒に起きて、身支度、洗濯、朝ご飯の準備、夜ご飯の仕込みを終えるのがだいたい10時くらい。その間に絵本の読み聞かせもやっています。その後、11時くらいから家族でブランチ。

羽生 スーパー主婦ですね! もともと家事がお好きなんですか?

眞鍋 好きではないんですが、「皆がちゃんとやっているっぽいのに自分だけができていない」というのが嫌なんです。

羽生 完璧主義でいらっしゃるんですねぇ。

眞鍋 でも手抜きですよ。お掃除はルンバですし、食事も毎日ほぼ同じような献立。午後は子どもをお昼寝させた後、買い物に行って、近所の子育て支援センターに寄ったり、幼児教室の体験に出かけたりしています。子育て中の友だちの家に遊びに行くことも多いですね。仕事がある日は母にヘルプを頼んでいます。ドアトゥードアで30分くらいの距離に住んでいるので、本当に助かっています。今はマックスでも週3回くらいが、無理ない仕事のペースになっています。

羽生 「毎日フルタイム勤務」という働き方だけに縛るのはもう古いですよね。最近はキャリアや能力のあるママたちが、週3回だけ出勤するような柔軟な働き方を選ぶワークシフトの例が増えてきていますよね。子どもや家族としっかり向き合いながら、やるときはしっかりとプロフェッショナルに仕事する。そういうメリハリのつけ方、いいですよね。

眞鍋 いいと思います。気持ちにゆとりが持てるバランスを保つことがとても大事だなと実感しています。子育て中って食事の組み立てとか考えるのが一番大変じゃないですか? 1日おきにスーパーに行けるとバランスのいい食生活を維持できたりするので。あと、私だけではなく家族全員のベストバランスをトータルで整えていくためにも、柔軟な働き方って大事だなと思います。母にお願いするのも週2回くらいがマックスで、いくら「頼っていい」と言われたとしても甘え過ぎずに相手の負担にならないバランスを意識しています。子どもが歩けるようになったら集団生活をさせたいと思っているので、今は保育所探しを頑張っています。

羽生 日経DUALは「仕事も、子どもも、愛してる。」というキャッチフレーズで、育児と仕事の相乗効果を提案してきました。眞鍋さんの実感としてはいかがですか?

眞鍋 すごく共感します。出産した直後は大変だったこともあって「私はもう一生仕事しなくてもいい」と思いました。「できない」という気持ちが強くて。でも、今まで支えてくださった方々とまた一緒に頑張れる幸せを感じています。仕事をもっと好きになったかもしれませんね。

 復帰してしばらくは、「脳内の半分が授乳」状態だったんですが、ある時、番組の打ち合わせをしていた時に「100%仕事に没頭できている自分」に気づいたんです。「私、またこういうふうになれるんだ!」って嬉しくて、育児で使うのとは違う部位の脳が活性化しているのがわかりました。

羽生 仕事に没頭した後に、子どもに会う瞬間って最高じゃないですか?

眞鍋 そうそう! 会いたい気持ちが倍増というか。大事なものが二つあるって本当に幸せなことですね。もちろんやることは増えるし大変なんだけど、その分、幸せは2倍以上ですね。

羽生 かをりさんの連載コラムを拝見していると、「賢い母」だなという印象を受けるんです。とても冷静に自分自身を見つめていらっしゃいますよね。

眞鍋 子どもを産んでから、より自分自身に向き合うようになったかもしれませんね。私自身の内面が充実していないと、家族を幸せにできないと思っているので。文章を書くと自分自身が整理される感じがします。もともと分析が好きなんです。産後すぐにメンタルやられかけた時も「どうしてこんなに大変なの?絶対おかしい!」と思って人類史上の育児について調べてみたんです。縄文時代にまでさかのぼって。すると、集団育児をしていたことがわかって「やっぱり一人で育児するって無理ゲーなんだ!」って納得して、ちょっとラクになりました。

羽生すごいですね(笑)。自分で調べて頭で納得しながら解決していくんですね。

眞鍋 何でもすぐにネットで調べられる時代ですしね。腑に落ちるだけで、だいぶ気持ちは違いますね。

羽生 これから子育てを始める人にメッセージはありますか?

眞鍋 先の心配はしなくていいよ!と言いたいですね。私は妊娠中に「つわりが大変だよ」とか「イライラするよ」とかいろんなことを言われておどされましたが、他人から言われたことは実際には何も起きませんでした。その代り「足がむくむ」という誰も教えてくれなかったことが起きて「聞いてないよ~!」って悶えました。つまり、あれこれ案じてもしょうがないということ。「えいやっ」てやってみると、面白い経験がたくさんできると思います。

羽生子育て中の方々にもお願いします。

眞鍋 友人と話をしながら思うのは、100%満足しているワーキングマザーはいないということ。みな何かしら悩みを抱えながらやっている。100点満点ではなくていいから、自分なりの合格点でいいんじゃないかな。

羽生 男性陣にもメッセージを。

眞鍋 世の中、「イクメン」ブームが続きますが、世の中が掲げる理想像に無理やり自分を当てはめる必要はないと思います。一番大事なのは、ご自分の奥さんにしっかり向き合うこと。旦那さんに食事を作ってもらうことに喜びを感じる女性もいれば、私のように「キッチンは私のテリトリーとして任せて。その代わり、子どもとたっぷり遊んでほしい」という女性もいるはず。型にはまらず、自分たちらしく。そして子育て中ならではの、毎日の変化を楽しみながら。そんな気持ちで私もやっていきたいと思います。

(取材・文/宮本恵理子 写真/山出高士)