妊婦の血液から胎児のダウン症の有無などを調べる「新型出生前診断(NIPT)」。NIPTを受けた人が2013年の導入から3年間で3万人を超え、また、染色体異常が確定した人の9割が、人工妊娠中絶を決断していることが明らかになりました。

 35歳以上の高齢で出産を経験する人を中心に今、大きな注目を集めている「出生前診断」。“命の選別”というセンセーショナルな話題として取り沙汰され、長きにわたり安易には語れない賛否両論の議論を巻き起こしている一方で、中立的立場からの情報に乏しく、一般の利用者がその真実や全容が分かりにくいことが課題となっています。

 現代の女性達は「出生前診断」についてどのように考え、また実際に診断を受けた先にはどのような現実が待っているのか―。出産ジャーナリストの河合蘭さんが執筆した書籍『出生前診断~出産ジャーナリストが見つめた現状と未来』(朝日新書)に収録された女性達の声を2回にわたって紹介します。2回目の今回ご紹介する部分では、多様な種類、様々な選択肢、相談相手や情報が不足した状況のもと、検査を前に大きく気持ちが揺れた経験者達の思いが丁寧に綴られていきます。

揺れる気持ちを抱える女性達

 揺れる気持ちを抱いている人はたくさんいる。30代前半で2児の母のDさんは、いま、3人目を考えているところだ。妊娠した同僚や友人にはNIPTの予約を取る人が多くなってきたという。だから「私も、今度妊娠したら受けるのかな」という感覚があり、「たぶん大丈夫だけど、安心のために受けたい」とも言う。

 ただDさんは、インタビューの最中に「もし万が一、陽性だったらすごく苦しむと思います」と言い出した。というのもDさんには「検査で染色体疾患が見つかっても産みたい」という気持ちもあり、それは20代で2度にわたる流産を経験していたためだった。

 「流産したとき、どうやっても生まれてこない命があるのだと知りました。だから、流産しない命には、生まれてくる意味があるのだという気がするんですね。

 ダウン症候群があったら、保育園は入れるんですか。いまの仕事を退職することになるのは、悲しいですね。それがいちばん苦しむところ」

 Dさんは、実際に妊娠して、検査の時期になるまで、揺れる気持ちを持ち続けるかもしれない。

 出生前診断で自分がどんな選択をするかは、妊娠前から考えておいたほうがいい。でも、考えはまとまらないこともあり、また、人生の中で変わっていくことも多い。

 ダウン症候群を持つ子どもを育てている濱倉千晶さん(子育て支援ファイナンシャルプランナー)は、染色体疾患を持つ子がいる友人が次の子を妊娠したときに、羊水検査を受けようかと迷っていると聞いた。そのときは、友人の気持ちが理解できず、「どうして、そんな検査を受けようと思うの? お兄ちゃんは、あんなに元気に育っているのに」と言ってしまった。

 ところが、そのあと、自分が次の子を妊娠すると、思いがけない強い不安を感じた。そして、あのときの友人の気持ちがよくわかり、口にしてしまった言葉を後悔したという。

 私は、この取材中に、いざ妊娠したら、それまでとは違う気持ちになった人の話をいくつも聞いた。