「子どもにリスクを負わせて、自分のために受けた」という苦しみ

 「周りからは、『羊水検査って、あの、中絶する検査でしょ』と思われるのかもしれませんね。でも、私にとっては、前に進むための検査でした。私のように、リスクが高いと言われた人は、やっぱり、ものすごく悩むんじゃないですか」

 ちなみにHさんのNTの計測値は4ミリ強で、正常に生まれる率が7割くらいかと判断される値だった。

 妊娠5カ月に入って羊水検査を受けたとき、Hさんは、とても緊張した。穿刺は、超音波で子宮の中をよく見ながら慎重に行われる。でも、画面を見ると赤ちゃんが動いていた。

 (動いてる!)

 そこに、すっと長い針が入ってきた。

 (お願い、動かんといて、動かんといて!)

 Hさんは、心の中で叫んだ。

 結果は、陰性。

 いま、そのときの赤ちゃんは1歳の可愛い盛りだ。36歳になったHさんは、早く次の子を欲しいと思っている。卵子の老化は進み、不妊、流産、そして子どもの染色体異常の確率も年々増すのだから。

 でも、Hさんの心は、まだ次のステージには進めない状態にあった。

 「怖いんです」

 子どもは何人でも欲しいくらいだが、なかなか勇気が湧かない。

 「子どもに異常があるかもしれないと告げられ、もがき苦しんだ、あの思いをもう一度味わうことになるかもしれない。それを考えると、妊娠するのが怖いのです」