揺れる気持ちを抱える女性達
揺れる気持ちを抱いている人はたくさんいる。30代前半で2児の母のDさんは、いま、3人目を考えているところだ。妊娠した同僚や友人にはNIPTの予約を取る人が多くなってきたという。だから「私も、今度妊娠したら受けるのかな」という感覚があり、「たぶん大丈夫だけど、安心のために受けたい」とも言う。
ただDさんは、インタビューの最中に「もし万が一、陽性だったらすごく苦しむと思います」と言い出した。というのもDさんには「検査で染色体疾患が見つかっても産みたい」という気持ちもあり、それは20代で2度にわたる流産を経験していたためだった。
「流産したとき、どうやっても生まれてこない命があるのだと知りました。だから、流産しない命には、生まれてくる意味があるのだという気がするんですね。
ダウン症候群があったら、保育園は入れるんですか。いまの仕事を退職することになるのは、悲しいですね。それがいちばん苦しむところ」
Dさんは、実際に妊娠して、検査の時期になるまで、揺れる気持ちを持ち続けるかもしれない。
出生前診断で自分がどんな選択をするかは、妊娠前から考えておいたほうがいい。でも、考えはまとまらないこともあり、また、人生の中で変わっていくことも多い。
ダウン症候群を持つ子どもを育てている濱倉千晶さん(子育て支援ファイナンシャルプランナー)は、染色体疾患を持つ子がいる友人が次の子を妊娠したときに、羊水検査を受けようかと迷っていると聞いた。そのときは、友人の気持ちが理解できず、「どうして、そんな検査を受けようと思うの? お兄ちゃんは、あんなに元気に育っているのに」と言ってしまった。
ところが、そのあと、自分が次の子を妊娠すると、思いがけない強い不安を感じた。そして、あのときの友人の気持ちがよくわかり、口にしてしまった言葉を後悔したという。
私は、この取材中に、いざ妊娠したら、それまでとは違う気持ちになった人の話をいくつも聞いた。