妊婦の血液から胎児のダウン症の有無などを調べる「新型出生前診断(NIPT)」。NIPTを受けた人が2013年の導入から3年間で3万人を超え、また、染色体異常が確定した人の9割が、人工妊娠中絶を決断していることが明らかになりました。

 35歳以上の高齢で出産を経験する人を中心に今、大きな注目を集めている「出生前診断」。“命の選別”というセンセーショナルな話題として取り沙汰され、長きにわたり安易には語れない賛否両論の議論を巻き起こしている一方で、中立的立場からの情報に乏しく、一般の利用者がその真実や全容が分かりにくいことが課題となっています。

 現代の女性達は「出生前診断」についてどのように考え、また実際に診断を受けた先にはどのような現実が待っているのか――。出産ジャーナリストの河合蘭さんが執筆した書籍『出生前診断~出産ジャーナリストが見つめた現状と未来』(朝日新書)は、是非を問う視点ではなく、女性の立場から出生前診断に向き合った一冊。この本から女性達の声を抜粋し、2回にわたってお届けしていきます。

アンケートから浮かび上がった女性達の気持ち

 いまの女性達は、出生前診断をどのように感じ、行動しているのか、アンケートを行ったことがある。NIPTが開始される直前の2012年11月、妊娠・育児情報サイト『ベビカム』(http://www.babycome.ne.jp/)の協力を得て、同サイトのユーザー150名を対象に実施した調査だ。

 まず、前回の妊娠でどれくらいの人が、羊水検査や母体血清マーカー検査を受けているのかを見たところ、35歳以上の出産を経験したことがある母親57名のうち、羊水検査を受けたことがある人は11パーセント、母体血清マーカー検査を受けたことがある人は5パーセント(両方受けた人3パーセントを含む)だった。

 ちなみにNIPTが登場する前の日本では、自発的に受ける出生前診断の大半がこの2種類だ。つまり、何らかの出生前診断を受けた人は高齢妊娠層の14パーセント程度にとどまっていた。これは、私がいくつもの病院で聞いた「高齢妊娠のうち、出生前診断を受ける人は1~3割程度」という話に重なる。

 しかし次に、回答時年齢35歳以上の母親82名に「再び妊娠したらNIPTを受けますか?」という質問をしてみたところ、以下のグラフのようになった。「受ける」ときっぱり答えた人は15パーセント。

河合蘭・ベビカム インターネットによる共同調査 ※『出生前診断~出産ジャーナリストが見つめた現状と未来』(朝日新書)P52図表9から引用
河合蘭・ベビカム インターネットによる共同調査 ※『出生前診断~出産ジャーナリストが見つめた現状と未来』(朝日新書)P52図表9から引用

 一見、NIPTが登場しても女性たちの行動は変わらないようにも見えた。しかし、その背後には、「受けるかもしれない」と答えた人たちの存在があった。

 そこで、「受ける」「受けるかもしれない」と答えた人を合わせたところ、39パーセントとなった。これは、「受けない」「たぶん受けない」と答えた人を合わせた38パーセントとほぼ同じであり、意見は真っ二つに割れる形となった。そして4人に1人は「わからない」と答えていた。