揺れ続ける心

 遺伝カウンセラーたちと話をしていても、「障害は不安ではない」という人はほとんどいないのが現実で、「私は、どんな子であっても育てていけます」と断言する人は少ないという。それでも、「まあ、何とかやっていけるでしょう」と考える人が大半を占めるのが、これまでの日本だった。

 しかし日本の女性達も、検査技術が変わってきたいま、少し検査を受ける方向へ傾き始めたように見える。

 NIPTが開始されて1年半経った2014年10月、キャリアウーマンを対象にした女性誌『プレジデント・ウーマン』(プレジデント社)は、楽天リサーチの協力を得て、「出生前診断を受けたいか、受けたくないか」の二択の形でアンケートを行った。20代後半から40代の「子どもが欲しい働く既婚女性」503人が答えている。

 すると、「出生前診断を受けたい」と答えた人の割合は、30代後半が6割とずいぶん多かったが、次いで40代前半と20代後半がともに5割程度だった。若い人も出生前診断に関心が高い。若い人は子育ての負担を重く感じがちなのかもしれないが、それでも今後、世代交代が進めば、検査の希望者はさらに増加する可能性がある。

◆◆◆

 引き続き、次回は、実際に出生前診断について葛藤した女性達の物語をお伝えします。

河合 蘭

(かわい・らん)1959年生まれ。3児の母。カメラマンとして活動した後、1986年より出産関連の執筆活動をスタート。妊娠・出産・不妊治療・新生児医療などを取材してきた、日本で唯一の出産専門ジャーナリスト。東京医科歯科大学、聖路加国際大学大学院、日本赤十字社助産師学校非常勤講師。著書に『卵子老化の真実』(文春新書)、『安全なお産、安心なお産 「つながり」で築く、壊れない医療』(岩波書店)、近著は浅田義正氏との共著『不妊治療を考えたら読む本 科学でわかる「妊娠への近道」』(ブルーバックス)。出生前診断の全容が分かる著書『出生前診断~出産ジャーナリストが見つめた現状と未来』(朝日新書)が「科学ジャーナリスト賞2016」を受賞。

『出生前診断~出産ジャーナリストが見つめた現状と未来』
河合蘭著/朝日新書

購入はこちらから
Amazonで購入する

(イメージ写真/PIXTA)