日経DUALから、「保活」に役立つムック『保育園に入りたい!2017年版』を発売しました。

 昨年とは違う今年の対策と傾向や、誕生月によって入園への道のりが違ってくる「保活年間スケジュール」の解説、園見学に持って行ける便利なチェックシートなど、ノウハウがたっぷり。もちろん、複雑な保育園の種類を整理して説明するほか、申し込みの方法、待機児童になってしまった場合の次の一手、ママの仕事復帰で準備すべきことなどについても優しく解説します。保活ビギナーのママ&パパだけでなく、出産を控えた同僚や後輩へのプレゼントに最適です!

 今日から4回にわたって、『保育園に入りたい!2017年版』の一部を掲載していきます。保活中の方、これから保育園を探す方、ぜひご一読ください!

<ムックの目次>
【巻頭】 2017年の傾向と対策、保活年間スケジュール
【第1章】 保育園はじめの一歩
【第2章】 さあ、保活のスタートです!
【第3章】 もし「待機児童」になったら?
【第4章】 今、保活ママが直面している問題
【第5章】 「みんなのラクラク保育園検索」活用法
【第6章】 園が決まったら、復職後の保育園生活に備える

日経DUALのムック
これ一冊で保活がわかる!
「保育園に入りたい!2017年版」(税込1200円)

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 2015年度から新しい認可の保育制度として、小規模保育や家庭的保育(保育ママ)、事業所内保育などがスタートし、保活における重要な選択肢の一つになってきています。ただし、これらの対象は原則0~2歳児。3歳からは、幼児クラスのある保育施設に転園しなければなりません。待機児童が多い地域では、「3歳の壁」に関する情報収集が重要になります。

なぜ2歳までなの?

 子ども・子育て支援新制度が始まって、認可の保育施設・事業の種類が増えました。新しく増えた小規模保育・家庭的保育・事業所内保育は「地域型保育」と呼ばれ、市区町村が認可します。

 これらの「地域型保育」は、原則0~2歳児を対象にしています。それにはこんな理由があります。

 ① そもそも待機児童は0~2歳児が圧倒的に多い。

 ② 0~2歳児は、家庭的な雰囲気の中で、少人数で保育されたほうが落ち着くとされており、子どもにとっても悪くない。

 ③ 活動量も比較的少ないため、園庭がないことの不都合も幼児ほどではない。

 ④ このように小規模で簡易な施設であれば、迅速に設置できて待機児童対策のスピードを速めることができる。

 ⑤ 今後、幼稚園が認定こども園になったり預かり保育を実施したりすることが増えると、3歳以上の保育の受け皿は過剰になる可能性がある。

 どれもまっとうな理由に見えるのですが、保護者にとっては、そんなに簡単な話ではありません。入園できても、満3歳の4月までに認可保育園、認定こども園、幼稚園などに移ることが前提となっているので、そのときにまた「保活」をするのか、そこで入れなかったらどうなるのか、などなど考えると不安になるのです。

 このため、利用申し込みでは、就学前まで通える認可保育園に人気が集中しているのが実情です。

難しい連携施設との協定

 制度としては、小規模保育などの卒園後について一応の対策が盛り込まれています。「連携施設」という仕組みです。連携施設とは、小規模保育や家庭的保育などと協定を結び、その卒園児を受け入れる認可保育園や認定こども園のことです。

 しかし、これがなかなか難しい。家庭的保育は、定員が5人以下(うち卒園児は1~2人)と少ないので比較的容易ですが、小規模保育は最大定員19人で卒園児も6~7人になる可能性があります。認可保育園の場合、2歳児と3歳児の定員の差は平均で3人程度です。定員差を広げて席を用意できる園もあるかもしれませんが、予定どおりの転入がない場合などを考えると、受入れ側にリスクがあります。

 首都圏のいくつかの自治体をチェックしたところ、家庭的保育は比較的連携施設が決まっていましたが、小規模保育は連携施設未決定のところが多く見られました。

転園の申請では加点される

 連携施設がない場合、小規模保育・家庭的保育などからの認可保育園・認定こども園への転園申請については、入園選考で加点されることになっています。この加点は大きなものなので、希望園の3歳児クラスに空きがあれば、入れる可能性は高いと言えます。ただ、空きがなければ、いくら加点があっても入れません。

 また、加点されるのは卒園児だけで、0・1歳児クラスの途中で転園したい場合には加点されない自治体が多いと思います。そうなると、認可外に入園して、認可外在園の加点で早めに認可保育園転園を狙ったほうがいいと判断する人もいるでしょう。ただし、ここ数年、認可外在園の加点を変更する自治体もあるので注意が必要です。

「3歳の壁」は本当にあるのか

 不安になることばかり書いてしまいましたが、本当に「3歳の壁」があるのかどうかは、実は地域によって違っています。

 小規模保育・家庭的保育・事業所内保育などの「地域型保育」が地域にどのくらいあるのか、これに対して認可保育園・認定こども園・預かり保育がある幼稚園の3歳児の受け皿の余裕はどうかなどが「3歳の壁」を左右します。外からはなかなか見えにくいのですが、今後、地域型保育の増設が落ち着いてくると、地域ごとに状況が分かってくるはずです。

「保活」ではどう考えたらいいのか

 小規模保育は、制度開始の2015年4月に1655カ所が開設されました。認可外からの移行も多く、待機児童が多い首都圏を中心に施設数が伸びています。家庭的保育、事業所内保育はそれほどの伸びはありませんが、認可保育園と一緒に利用申込みをできるようになった今、これらが「保活」で重要な選択肢となってくることは間違いありません。

 小規模な保育のメリットは、家庭的な環境がつくりやすく子どもが落ち着きやすい、保護者と保育士の距離が近く親密な信頼関係がつくりやすいということが挙げられます。

 一方で、保育士配置基準は認可保育園よりも緩く、運営する事業者も多様なので、保育の質のバラツキが大きい可能性があります。認可保育園同様、見学などをして選ぶことが大切です。

 「3歳の壁」については、地域の情報に注意します。「この小規模保育の卒園児はだいたいA保育園に入れている」とか、「保育時間が短ければB幼稚園の預かり保育でも大丈夫」とか、今後だんだんに状況が分かってくるはずなので、市区町村の担当窓口や地域の口コミなどでも情報を集めてみてください。

 幼稚園の認定こども園への移行、預かり保育の充実、認可保育園の増設などが進む地域では、むしろ3歳以上のクラスで園児の争奪戦になるのではないかという見通しを持っている自治体関係者もいます。地域の実情を見た冷静な「保活」を進めましょう。なお、「地域型保育」には在籍を延長する特例の制度もありますので、本当に困ったら自治体に相談してみてください。

 小規模保育の年齢制限を取り払おうという意見も聞こえていますが、私は賛成ではありません。幼児には幼児に適した環境(園庭、適度な規模の集団活動)が提供されるべきだと思うからです。認可外保育施設で0・1歳にまじって4歳児がぽつねんと1人でいる姿を見て、強くそう思いました。

(本文/普光院亜紀 イメージカット/鈴木愛子)

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