花粉症やアトピーの人が増え、もはや日本の国民病ともいえる“アレルギー”。子ども達のアレルギーの実態はどうなっているのでしょうか? 日経DUALでは、子どものアレルギーに関するアンケートを行い、200人以上から回答を得ました。さらに、小児アレルギー治療の最先端で活躍する医師3人にインタビューを行い、最新の治療法やアレルギーの今後について伺いました。特集最終回は、全園児が同じ給食を食べる「なかよし給食」に取り組んでいる、大阪のおおわだ保育園の人気メニュー4品を紹介します。食物アレルギーでも食べられる「除去食」というと、味気ないものを想像しがちで、材料も手に入りにくそう、というイメージですが、おおわだ保育園の給食は彩り豊かでおいしそう。材料は一般のスーパーで手に入りやすいものばかりです。「なかよし給食」がもっと広まってほしいと願う、園長の馬場睦代先生に、なかよし給食を始めた経緯や工夫していることを聞いてみました。

【子どものアレルギー最新大全特集】
第1回 食物・皮膚・ぜんそく アレルギーの仕組みは共通
第2回 食物アレルギーは入学前に9割直る その最新治療法
第3回 アトピー発症可能性は乾燥、食物、モダンライフ
第4回 ぜんそく児100万人時代コントロール&寝具改善を
第5回 お友達がアレルギー、何に気を付ければいい?
第6回 アレルギーっ子必携!友達の親向け「お知らせシート」
第7回 アレルギーっ子もOK!な給食の4大人気レシピ ←今回はココ

みんなで同じものを食べるという発想から生まれた「なかよし給食」

卵・乳製品・小麦を使わない「なかよし給食」を実践している、大阪府門真市のおおわだ保育園での食事風景
卵・乳製品・小麦を使わない「なかよし給食」を実践している、大阪府門真市のおおわだ保育園での食事風景

 おおわだ保育園には、現在194名の園児が在籍しています。そのうち食物アレルギーのある子は20名です。栄養士と延べ5名の調理スタッフで、職員分も含め約250人分の給食を作っています。乳児向けのアレンジ(離乳食)はしますが、基本的にメニューは全員一緒。これが、卵・乳・小麦を使わないおおわだ保育園の「なかよし給食」です。

 「ぼくもみんなといっしょの給食を食べたい」

 食物アレルギーのため給食を食べられず、お弁当を持参していた園児が発したこの一言が「なかよし給食」のきっかけです。そのとき「きっと同じ給食を食べられるようにしてあげるね」と約束しました。実は、私の次男も食物アレルギーで、アナフィラキシーショックで救急車で搬送された経験もあります。食物アレルギーの子どもや、その保護者の気持ち、アレルギーの怖さはよく知っていました。自宅ではアレルギー対応のカレーやハンバーグを手作りして家族で同じものを食べていたので、これを保育園の大量調理にも応用できないかと、園の栄養士に持ちかけたところから「なかよし給食」への取り組みは始まりました。

 食物アレルギーに対応した除去食は、通常は普通の献立からアレルギーの子には何を抜いていこうかと考えていきます。除去するものはアレルギーの内容によって異なるので、調理の工程が複雑になり、調理員はとても緊張します。そこで「なかよし給食」では、アレルギーのある子の献立をまず考えることにしました。難しいことと思われるかもしれませんが、実は保育園の給食で乳と卵が使われることは意外と少ないのです。ハンバーグのつなぎやマヨネーズなどで使われることが多いので、それらを何に替えようかと考えていくと、次々にレシピが広がっていきました。

 代替食品は専門店で購入するとコストが高くついてしまい、結局は続きません。探してみると、スーパーで買える食材にもアレルギー対応のものがありました。今回紹介するレシピでも使っているのでぜひ、参考にしてください。

 卵・乳・小麦はもともとは大切な栄養源で調理も簡単です。食物アレルギーでない園児の保護者には、「卵や牛乳を使った料理はおうちでしっかりとってね」とお願いしています。保育園の給食は安心・安全なことが一番です。それには卵・乳・小麦のない食事がベストだと考えています。全国の保育園に少しでも「なかよし給食」が広まり、給食の時間にみんなの笑顔が広がるといいですね。

 「なかよし給食」の特徴

・ つなぎや衣に卵、乳、小麦を使わず、別の食材に替える
・ 調味料を乳・卵不使用のものにする
・ 手作りのだしで調味料を減らす
・ 代替食材はスーパーでも買えるものから探す
・ おやつも手作りする
・ たんぱく質は肉、魚、大豆製品で補う
・ カルシウムは海藻、野菜、大豆製品で補う