小さいうちから一緒に育つ環境を社会が整える

 “まず議論すべき大切なことは、(中略)たとえどのような子どもが生まれたにしろ、親だけにその子どもを育てる責任を負わせるような社会にするのではなく、社会がそういう子どもを受け入れられる状態にしていくという点ではないだろうか。”(『あなたは、わが子の死を願ったことがありますか? 2年3カ月を駆け抜けた重い障がいをもつ子との日々』123ページより)

── 確かに子育て中の親はただでさえ負い目を感じがちです。障がい児の親が社会で孤立してしまわないためにはどうすればいいのでしょうか。

佐々 一番いいのは、小さいうちから一緒に育つことだと思うんです。今もすでにインクルーシブ教育を実践しているところはありますが、なかなか広がりません。でも、一緒に育てば、お互いにどういうふうに接すればいいかも自然と分かると思うんです。

 私は可能なときには尚くんを連れてお姉ちゃんの幼稚園にも迎えに行きました。そうすると子ども達がワーッと寄ってきて、「何これ」「何これ」って普段は目にすることのない経鼻チューブやバギーにくぎづけ。そういう環境で育てられるのは、障がいのある子にとってもやはり刺激となり、いいですよね。子どもからの刺激が、子どもには一番必要で、それはどんなに重い障がいがある子でも同じだと思うから、障がいの有無だけで分けてしまわないでほしいなと個人的には思います。

── 確かに、日常的に障がい者と触れ合っているのといないのとでは、健常の親子も接し方が全然違ってきますよね。なかなかインクルーシブ教育が広がらない理由はどこにあるのでしょうか。

佐々 すごく大変だからだと思います。受け入れる態勢を整えるのは本当に大変です。でも、一番大事なのは受け入れると決めることだと思うんです。それを決めさえすれば、実際に何をどうやっていけばいいのかということを集中して考えることもできますが、そこを決めないから、いつまでたっても前に進めない。

 もちろん、だからといって支援学校が不要だ、などとは思いません。すべてを同じ施設でできるわけはなく、また同じ障がいを持っていても同じ支援をすればいいわけでは全くなく、必要とする支援は本当に様々です。ただ、別の遠く離れた敷地に支援学校だけがぽつんとあるという形でなくてもいいのではないかなと思うのです。

── きょうだいの存在も、尚くんにとってとても大切だったとのことですね。

佐々 そうですね。小さい子が周りにいて、しょっちゅう子どもの声が響いているなかで育つのは、障がい児にとってもいい刺激になるように思います。何より、真っすぐに尚くんをかわいがるお姉ちゃんのその純粋さに、私が何度救われたか分かりません。またもうすぐ2歳になろうとしている尚くんに、妹ができると、尚くんの表情がお兄さんらしくなったようにも感じました。