私立難関校を第一志望にしている子なら、少しの対策で合格可能
「中学受験」といえば、これまでは「私立中学を受験すること」を意味することが多かったと思います。しかし、2005年に東京都に初の公立中高一貫校が開校し、その翌年からの5年間で11校の公立中高一貫校が誕生すると、「公教育で私立並みの手厚い指導が受けられる」というお得感から、公立中高一貫校が注目を集めるようになりました。
その人気は今も衰えることなく、2016年入試でも約6~8倍と高倍率に。私立の難関校、男子御三家の開成・麻布・武蔵でさえ、倍率は約3倍以下ですから、公立中高一貫校の受検がいかに狭き門であるかが分かります。
これまでは「何が何でも私立!」と考えて私立中学受験をする家庭と、「取りあえず受検してみて、受かればラッキー!」と考えて公立中高一貫校を受検する家庭の二手に分かれる風潮がありました。
ところが、この1~2年、公立中高一貫校の第一期生、二期生の進学実績が出始め、東大合格者なども出てくると、私立の難関校を第一志望にする子が、第二志望、第三志望の併願校として、公立中高一貫校を受検するようになってきたのです。
とはいえ、公立中高一貫校の入学者選別は、“受験”ではなく“受検”と書くように、学力テストではなく、小学校の成績や活動の記録を反映させた「報告書」と「適性検査」と呼ばれる筆記テストで選別が行われます。「適性検査」では、私立中学受験のような教科別の学力テストではなく、教科の枠を超えた総合力が求められます。これが、私立中学受験と公立中高一貫校の受検は対策が全く違うといわれてきたゆえんです。
「でも、私立中学校と公立中高一貫校の併願は可能です」と、西村先生は断言します。
「公立中高一貫校の『適性検査』は教科横断型といわれ、一つの教科だけをテストするものではありません。また、ただ知識を問うだけの選択問題や抜き出し問題はほとんどなく、文章やグラフ、資料などを読み、そこから何が分かるかを考え、自分の言葉で表現する力が求められます。そのため、解答の多くが記述式です」
「しかし、こうした問題形式は、実は私立の難関校の入試では既に行われていることで特別なことではないのです。むしろ、知識の量でいえば、私立難関校を第一志望にしている子のほうが圧倒的に上で、論理的思考力や記述力も鍛えられているため、そういう子にとっての公立中高一貫校対策は、6年生の10月からでも十分間に合います。過去問5年分を解いておけば問題ないでしょう」
「ただし、一つだけ注意してほしいことがあります」と西村先生は指摘します。