公立中高一貫校の「適性検査」を意識した試験を実施する私立が増加中

 では、公立中高一貫校を第一志望にしている子は、どんな私立中学校を併願するのでしょうか?

 西村先生は説明します。

 「10年前、東京都に公立中高一貫校が続々と誕生したころは、公立中高一貫校の受検は対策が難しく、並外れた高倍率のため、『落ちても当然、受かればラッキー!』といった記念受検のようなところがありました。実際、多くの子が公立中高一貫校受検1本のみで、私立中学は併願しない傾向にありました」

 「けれども今や、公立中高一貫校受検を専門とする塾やコースもでき、公立中高一貫校受検のための対策がしやすくなりました。また、近年、中堅以下の私立中学で公立中高一貫校の『適性検査』を意識した適性型試験を実施する学校が増え、2月3日の本番前のお試し受験として、私立中学を併願する子が増えています

中堅校以下の適性型試験は生徒確保の狙いが大きい

 「公立中高一貫校は、学校によって若干の差はあるものの四谷大塚の偏差値でいうと60前後に値します。そのため、お試し受験をする私立中学は偏差値でいうと50以下の学校が対象になります。問題傾向が似ている私立中学の入試を本番前に体験しておくことはよいことだと思いますが、中には『適性型試験を実施』とうたっておきながら、果たしてこれは適性型といえるのだろうか? というような試験を行っている学校もあります」

 「その背景にあるのが、近年進行している少子化の問題です」、と西村先生。

 「多くの私立中学は生徒確保に苦戦しています。その対策として、多くの公立中高一貫校受検者のお試し受験の受け皿を担っている学校もあります。しかし、公立中高一貫校の受検者は、本番前のお試しとして私立中学を併願しますが、本命の公立中高一貫校が不合格だった場合、その私立中学へは行かないという選択をするケースがほとんどです。公立中高一貫校を第一志望にする子は、『受かればラッキー! ダメなら高校受験でリベンジ』と思っている子が多くいます。これは私立中学を第一志望にする子にはあまり見られないケースです。私立中学を第一志望にしている家庭は、たとえ第一志望がダメでも、第二志望、第三志望の私立中学へと進学させます。ここが第一志望を私立中学にする子と公立中高一貫校にする子の大きな違いでしょう」

 近年、公立中高一貫校の進学実績は好調で、私立中学受験を望みつつも、公立中高一貫校も気になるという家庭が増えています。先にお伝えしたように両者を併願することは可能ですが、どちらを第一志望にするかによって、受験勉強の進め方は大きく変わってきます。私立難関校で記述式の問題を出す学校であれば、少しの対策で公立中高一貫校の受検対策ができますが、公立中高一貫校を第一志望にするのなら、中堅以下の私立中学を併願するという選択になります。このように目指す学校のレベルが大きく違ってくることを知っておきましょう。