日本の社会保障は“孫のクレジットカードで買い物している”状態

 続いて、経済学者で昭和女子大学グローバルビジネス学科長の八代尚宏先生の講演です。テーマは「雇用流動化と若者への投資~シルバー民主主義を超えて~」。社会保障と労働市場の問題の結びつきがよく分かりました。

昭和女子大学グローバルビジネス学科長の八代尚宏先生
昭和女子大学グローバルビジネス学科長の八代尚宏先生

 八代先生は「少子高齢化が進む中で借金に全面依存している日本の社会保障の現状がある。これは、孫のクレジットカードで買い物している状態と同じです」と言います。大変分かりやすいと思いました。

 また、「長寿化しているのに、年金支給開始年齢が早すぎるため、受給期間が長く財政負担が大きい」、「本来は義務教育の小中学校が形骸化し、高所得層ほど“良い大学”への投資ができています。高偏差値大学の出身者ほど、生涯所得の大きな大企業への就職率が高いのです」と解説をしていました。

 そして、今の大学は「企業に選抜される基準を得るために学歴を獲得する場所になっており、教育需要は労働市場の状況から派生しています。18歳時点での選択が一生を決めるのではなく、生涯を通じて再チャレンジできるよう、雇用の流動化を促進する労働市場改革が必要です」と提案します。

 八代先生の考える、若者への教育投資の増やし方は「保育保険」というものです。これは介護保険と一体的な活用で固有の財源を確保し、被保険者を20~39歳とした上で、医療保険に上乗せして徴収するという仕組みだそうです。子育て費用を「公的保険」で賄うという発想は斬新に映るかもしれません。「今の年金制度は世代間の支え合いであるため、子どもを持つ人も持たない人も、みなで子育て費用に責任を持つことには、論理的な根拠がある」という八代先生の解説は筋が通っていると、私は思いました。