日本経済の低迷の要因は、保育と大学にお金がかかりすぎること
まず始めに、社会学者で京都大学准教授の柴田悠(はるか)先生による講演。国際比較や定量分析に基づく論理的な内容は「子ども予算倍増」の強力な説得材料になりそうです。
最初に柴田先生は、日本の課題を全体像として提示しました。「日本は保育と大学にお金がかかりすぎるため、『0~2歳保育利用率』と『大学進学率』が低く、それらが経済低迷の要因になっています。大学進学率の国際比較で日本はOECD平均を下回っており、学生1人当たりの公的高等教育支出の国際比較においてもOECD平均を下回っています。小中高は先進諸国並みに安くなっているのと対照的です」。
その後、保育・教育・高等教育を無償化することの意義に話が進みました。「長期的に見たメリットは、3~4歳での保育教育により非認知能力が上がり、それが所得上昇につながること。それにより犯罪率が下がり、税収が増えて、政府支出が減るため、子どもがいない人にも将来的メリットがあると言えます」。ノーベル経済学賞を受賞した受賞した米シカゴ大学のジェームズ・ヘックマン教授の研究を引用しつつ解説します。
柴田先生は、日本財団によるこのような試算も紹介しています。「日本にいる貧困な子ども(15%相当)の高校進学率・大学進学率が向上すると、一学年あたり、課税前の生涯賃金が2.9兆円増えて、税・社会保障の政府純支出(社会保障支出-税・社会保険料収入)が1.1兆円減ります」。
もし、すべての子どもの保育・教育・高等教育を無償化すると、合計コストは約8兆円となるそうです。また、DUAL読者の関心が高いであろう保育園不足問題を解決するため、潜在的待機児童の解消と民間認可園保育士の賃金を上げることに「合計で1.4兆円」が必要ということです。対象者を限定することの課題も踏まえつつ、思考や試算の過程を丁寧に解説してもらい、とても勉強になりました。