すべてを完璧にすることはできないから、手を抜くところは手を抜いて

―― 医学部進学への道もご主人のプロデュースの賜物でしょうか?

野宮 中学受験のころは合格するかどうかもギリギリのレベルだったのに、高校に進学後、最初のテストの成績がかなり上位だったんです。それで気をよくしたというか。最初は「これなら医学部も行けるんじゃない?」くらいの気持ちだったと思います。

 もともと勉強は嫌いではなかったみたいですし、医者になりたいというより「自分の実力を試したい」という気持ちのほうが強かったと思います。ちょうどそのころ、塾で息子と相性のよかった先生が辞めてフリーになられたので、家庭教師になっていただいたことも大きいですね。

―― お話を伺っていますと、大変順調な子育てといいますか、余裕さえ感じます。

野宮 もちろん「余裕がなくて大変!」という時期もありましたよ。でも、すべては計画次第なのではないかな、と思うんです。いかにタイムスケジュールをやりくりするかにかかっているというか。

 すべてを完璧にすることはできないから、手を抜くところは手を抜いて。

 例えば、家事一つ取っても私はお洗濯は好きですが、お掃除は嫌いです。整理整頓が苦手なので、部屋はいつもごちゃごちゃしているかな(笑)。主人も協力してくれましたので、「私は家族の健康管理のためにお弁当作りを頑張る!」とか役割分担して。料理もそれほど得意ではないのですけれどね。

好きな仕事をしている姿を子どもに見せることで幸福を示す

―― 旦那さんのご協力が素晴らしいですね! ママ自身が仕事を優先して長い時間子どもを預けることにどこか罪悪感を覚える人もまだ少なくないようですが、野宮さんご自身は仕事と子育てのバランスをどのように考えていらっしゃいますか?

野宮 私自身、子育てにすべてを捧げ、育児に専念するというタイプではないです。もちろん子どもは大事ですが、仕事も大事。好きな仕事をしている姿を子どもに見せることで示すしかないのですが、親が楽しそうに、幸せでいることは子どもにとってもうれしいことなんじゃないかと思っています。

 とはいえ、子育て中はすべてが子ども中心で、どうしても自分は二の次になる時期が確かにありますよね。うちも夜泣きがひどくて、寝かしつけのために何度も夜ドライブに出掛けました。そっとベッドに戻したらまた泣き始めてやり直し……ね。

 そういう時期こそ、自分の時間を持つことは必要です。協力してくれる人がいることは不可欠ですが、例えば意識して“自分が主役の日”をつくってみるのもいい。仕事や子育てという日常生活の中で、いつも誰かに主役を譲ってしまいがちな人こそ、頑張っている自分をお祝いする「晴れ舞台」を用意してあげてほしいのです。

 9月20日に出版した『赤い口紅があればいい』(幻冬舎)にも、「晴れ舞台は自分で用意して、時に主役感を味わう」という一節で「自分の誕生日や記念日を企画しよう」と書きましたが、子育て中でも時にはお子さんをどなたかに預けて一日自分のために買い物を楽しんだり、お茶に出掛けたりする時間を持ってほしい。日常生活の中のささやかな時間でもいいから、自分が主役の時間をつくることをお勧めします。私自身、出産直後、体型が変わってしまって似合う服がなくなって、おしゃれが分からなくなってしまった時期があって、息子を実母に預けて新しい洋服を買いに一日出掛けたことがあるんです。

―― 産後、「前の体型に戻るのかしら」「このまま、おばさんになってしまうのかな?」なんて恐怖は野宮さんにもありましたか?

野宮 ありましたよ。妊娠で10キロ太ってしまって。体型を戻すのに1年かかりました。職業柄、人に見られることが仕事ですから緊張感もあって。ショックを受けることがあっても「これではいけない」と思える限り、それは変身するためのいいきっかけと捉えるようにしています。

―― 働くママの中には、「就職してずっと仕事中心で突っ走ってきた」「育休・産休が初めての長期休暇です」なんていう人も案外いて、実は「このタイミングこそ自分磨きのチャンス」と捉えるママも少なくないと思います。後半では「おしゃれの扉を開くきっかけ」と「効率よく美人になる方法」について詳しくお聞かせください。

* 後半に続きます。

(取材/日経DUAL編集部 小田舞子、ライター/砂塚美穂、撮影/花井智子)