川溜まりには数えられないほどの魚たち! そして、肴たち!

 いや~、遠かった。阪神の安芸キャンプで何度か高知県には足を運んだことのあるわたしは、四万十川と言えど、それほど遠いところではないという錯覚があったのだが、どうしてどうして、高知県は東西に長い。目的地につくまでは、東京-大阪間をクルマで走るのと同じぐらいの距離と時間が必要だった。

 ただ、それだけの甲斐はあった。

 宿のご主人が子どものころからの遊び場だったという川溜まりには、数えられないほどの魚たちがいた。虎たちは手づかみで小さな魚をつかまえようとし、もうちょっと年上の子どもたちは、ご主人から教えてもらった仕掛けをあちこちに沈めた。ほんの30分も待てば、その中に魚や海老がかかっているのだから、楽しいことこのうえない。もちろん、とれた獲物の中にはわたしのおつまみとなるものもいる。

 でもって、こちらは川っぺりに腰掛けて足を水の中に入れ、ビールを片手にゴロン。ああ、この世にこんな極楽があろうとは!

 だが、本当の極楽は夜に待っていた。パッツンパッツンのカツオ。好きなだけどうぞ、とばかりに出てくる鮎。そして何より、ただ腹をかっさばいて、炭火の上に放り投げて、塩をぶっかけただけの鰻の味と来たら! あの甘さ。カリッとフワッが同居したあの食感。そして何より、「口溶け」としかいいようのない余韻。そこに高知の地酒をあわせたら、ああ、もう!

 ハプニングもいっぱいあった。せっかく予約しておいたトロッコ列車が、ほんの数駅進んだだけで雷の影響で運行取りやめになってしまったこと。ナビを信じて目的地を目指していたら、とんでもなく細い峠道に誘導されてしまい、車酔いした虎が盛大に車内でお好み焼き屋さんを開店してしまったこと。基本的には大変聞き分けのいい従兄弟のお兄ちゃんたちが、川遊びに夢中になりすぎて、いつの間にか姿をくらましてしまったこと──。 

 こうやって、書いてみて思う。ああ、いま、自分がやってるのって、初めてのことがいっぱいあって、でも楽しすぎてついこまめに書いておくのが億劫になって、最終的には8月31日に突貫工事で仕上げる絵日記みたいなもんだな、と。

 で、やっぱり夏休みって楽しかったんだなあ、と改めて。

 「来年も絶対に行こう」と固く誓った四万十川から戻ってきてからは、もう一つのビッグイベントが待っていた。虎のレスリング大会初出場である。