マジで辛い真夏の人込みを避けて、わたしが向かったのは四万十川

 どれだけ両親が夏休みとは無縁の人間であろうとも、幼稚園のお友達や先生からたっぷりと夏休みの楽しさを刷り込まれている虎(息子・3歳)は、ことあるごとに「水族館にいきたい」とか「ウルトラマンに会いたい」とか「お祭りにいきたい」等々、お出かけの欲求をストレートにぶつけてくるようになった。たぶん、要求の根底にあるのは「夏休みだから」。

 婉曲な要求であれば、こちらも婉曲に受け流すというオトナの対処法もあるのだろうが、何せ、行きたい、行く、のド直球である。これにこちらがド直球で「やだ」と返すのはあまりにも大人げなく、また、虎のトラウマになってしまうやもしれぬ。というわけで、お友達のお父さんよりはだいぶ年上であるはずのわたしが、老骨にムチ打って若いお父さんと同じく、子連れで街に繰り出すのである。

 いや、マジで辛いっすわ、真夏の人込み。

 でも、ウルトラマン・フェスティバルのショーを見ていた虎が、オトナからすればたかがショーだというのに、本気になって「がんばれーっ!」と絶叫してるのを見ちゃったりすると、「ああ、来てよかったなあ」と思ったりはする。東京タワーの水族館にある魚にエサやりができるゾーンで、自分の持っていたエサを小さい子に「はいっ」と手渡しする虎を見たときは、思わず腰抜かしそうになった。ま、行けば思い出はできるのだ。

 ただ、そうはいっても東京だけで夏休みを終わらせてしまってはいかん。大自然が満喫できて、あんまり人がいなくて、あと、旨い酒と肴が楽しめちゃうところはないだろうか。

 あった!

 前から行きたくて、でも行ったことがなかったところ──。

 高知県は四万十川流域である。

 さっそく、兵庫県に住むわたしの両親と従兄弟たちに声をかけてみると、すぐさま「行く!」とのお返事。わたしの弟が所有するワンボックスカーを借り、総勢8人で陸路四万十川へ向かうことになった。