子どもの虐待&DVの原因を考えるうえで重要なのが、夫婦間のDVです。想像に難くなく、DVの被害者になる割合は女性が多いのが現状です。

 「ひどいことをしても、普段は優しい人だから」「たたかれたり、殴られたりしたことはないから」と妻が思っていても、実は夫はDVをしていたという可能性は少なくありません。そしてそうした“DV夫”は子どもに身体的・性的・心理的虐待を行う危険性が高いと言います。さらに、夫から妻へのDVを子どもが目撃することでも、子ども自身が“加害者”になる可能性も…。

 夫から妻へのDVにより、情緒面・行動面・発達面、あるいは関係性を含め、子どもにはどんな影響があるのでしょうか。またトラウマをどう克服すればいいのでしょうか。

 第5回に続き、第6回では女性ライフサイクル研究所の西順子所長(臨床心理士)、NPO法人女性・人権支援センターステップの栗原加代美理事長に、夫から妻へのDVが子どもに与える影響、子どものトラウマについて詳しくお話を伺います。

【「子どもの虐待&DV 私達はどうすれば…」特集】
第1回 一歩間違えば、私も子どもを殺してしまっていたかも
第2回 児童虐待10万件超え時代の“駆け込み寺”リスト
第3回 子どもを叩いてはいけない。ならどうすればいい?
第4回 母親座談会「何度言っても聞かない。ついカーッと」
第5回 あなたも、DVを受けているのかもしれない
第6回 DV家庭で育つと子どももDV加害者になる? ←今回はココ

DV家庭で育つと攻撃的な子どもになってしまう!?

女性ライフサイクル研究所の西順子所長
女性ライフサイクル研究所の西順子所長

 DV家庭で育つと、子どもにはどんな影響があるのでしょうか。

 女性ライフサイクル研究所の西順子所長(以下、西所長)によれば、「児童虐待の防止等に関する法律」では、DVは心理的虐待の一つとして定義づけられています。

 第5回で示したように、手を出さずに暴言を吐くことも心理的暴力で、十分DVです。怒鳴り合いをしている両親を見て、あるいは父親が母親に暴力をふるっているのを見て、「早く終わりますように」と自分の部屋の片すみで小さくなっているという子どもは、本来安全な場所であるはずの家庭で安心できないという環境に置かれます。

 家庭は本来、子どもが健全に成長・発達するために不可欠な「安全基地」であるのに、DV家庭では、それが子どもから奪われてしまうのです。さらにDV目撃は、子どもにとってトラウマ(心的外傷)となるような苦痛をもたらすことが分かっています。

 西所長によれば、その影響は情緒面・行動面・発達面など多岐にわたります。一般的に他の子どもに対して攻撃的な態度をとりやすく、問題行動が多くなるといいます。特に男子の場合は、加害者の行動が学習モデルとなってしまうことが多いそう。また目撃だけでなく虐待を直接受けている子どもほど、行動に現れやすくなるといいます。例えば年齢相応でない、性的なことへの興味(お友達のプライベートな場所を触ったり、見たがったり)があるようであれば、性的情報にさらされている、性暴力の場面を目撃したり聞いたりしているということも考えらます。

 では、精神面、発達面ではどのような影響を示すようになるのでしょうか?

<次ページからの内容>

●幼児期の子どもは身体に不調をきたしやすい
●母子関係、きょうだい関係も悪くなる
●子どもの回復のために最も重要な手段は母親との絆
●味方を付け、安全を確保し、そして感情を言葉にすることを教える
●過去と他人は変えられないが、思考と行為は変えられる