【A15】 ○
◎ 「大丈夫?」「必ず受かる」「もっと頑張れ」と言うのはNG
◎ 会話の割合は親3、子7がいい
◎ 有名中学に受かってうつになるケースもある
「大丈夫?と子どもに聞くのは受験前のNGです」と吉田さん。
「大丈夫?というのは、親自身の不安定な気持ちを安心させるための言葉。そう声をかけられた受験生は、大丈夫でない要素をわざわざ探し出して不安になるからです」。子どもを心配するあまりに愛情が空回りして、親の言葉が受験うつへと追い詰めてしまうケースは少なくありません。
では、他にもあるNGワードとは?
「必ず受かる」などという暗示もだめです。親は子どものプレッシャーを取り除こうとかけた言葉でも、子どもにとってはハードルを上げるだけ。子どもの成績や実力を知る塾の先生に言われるなら、まだ分かります。「親に言われると、子どもにとっては『受かれば当たり前、落ちたらアウト』とチャレンジ精神を否定されているのも同然となります」(吉田さん)
あとは「もっと頑張れ」もNG。「うつの状態にいる人を漠然と励ましてはいけないのと同じです。頑張らなくちゃいけないと思うと、もっと深刻なスランプに陥ってしまう。『勉強法を工夫しよう』など具体的なアドバイスであれば有効です」(吉田さん)
親からの問いかけで一番大事なのは、子ども自身に語らせることです。「会話は親が3で子どもが7くらいの分量が理想です。問題を抱える親と子の会話は、それが10対0になっています。カウンセリング中、受験生本人から聞きたいのに、先に親のほうが答えてしまうという場面は少なくありません」(吉田さん)
塾でどんなことがあったか、発見はあったか、悩みやつらいことは何か。「今日はこういうことを習ったよ」と子ども自身が語ることで、丸覚えでなく生きた情報に変わります。
もし点数が悪くてふさぎ込んでいたら、自分で問題点を見つけられるよう、親が誘導するのが一番です。「試験は、分析や対策のために受けるものだよ」「一緒に考えようか」。すると、受験生は「ケアレスミスがなければ15点、アップしたな」「時間配分がうまくいかなかったな」「分からない問題には時間をかけないようにしよう」などと、自身で解決法を見つけ出すことができます。
受験で大変なのは、どうやって勉強を進めるか管理しなければならないことです。親にできるのは、スケジュール管理などコーチになってあげること。親の存在がいい方向に働けば、子どものモチベーションが上がるという調査結果もあるそうです。
自己愛型の受験うつもある
他にも、「才能を褒めるのでなく、努力を褒めてあげてください」と吉田さん。「頭がいいね」というのはNGだそうです。自己愛が膨らんでしまい、ちょっとした挫折の積み重ねがうつの発症につながりかねません。
「有名中学に受かったから、自分は天才だ」と思い込み、成績さえ良ければわがまま放題でいいと思っている子どもも問題だそうです。親が認めてくれるのは偏差値のみ。その他のことを制御できなくなり、自己管理ができない。こうした自己愛性パーソナリティー障害がひどくなると、大学受験でつまずいたときなどに心が折れ、うつになってしまうそうです。
「そういった子の場合は、まず家庭の仕事(お手伝い)をしてもらいます。体を動かして家族に貢献できる掃除や料理が特に効果的です」(吉田さん)
例えば、野菜を切るのに、指を切らないようにするにはどうすればいいか。野菜を小さく切って火が通りやすくなるようにしよう…。こうした様々な工夫を通して家族に感謝される経験を積むと、自己愛を制御しストレスに強い脳に育つそうです。
(文・写真/なかのかおり P2のイメージカット/鈴木愛子)