【Q14】 受験で精神的に壊れてしまう子がいるってホント?

【A14】 ○

 受験の失敗がトラウマになり、意欲なくす子も

 不安・不満、感情の爆発、食欲の急な変化に注意

 受験うつの治療ではまず親を治す

 「受験に失敗した子が、失敗に対してトラウマを持ち、何に対しても意欲をなくしてしまうケースは少なくありません」と言うのは、教育ジャーナリストでもある保坂展人・世田谷区長です。

保坂展人・世田谷区長
保坂展人・世田谷区長

 受験に打ち込む家庭でよくあるのは、夫婦の会話の多くが子どもの教育に集中すること。親は塾の意見に左右される→親が望んでいる、塾の先生も励ましてくれる、友人も受験する→私立受験に突入→振り落とされる。「不合格となった日以来、親の関心が自分になくなったのが分かり、人生が終わったかのように感じる子を何人も見てきました」(保坂さん)

 私立受験を失敗した子どもの多くは、そのまま地元の公立に進みます。問題を抱える子ども達の居場所作りに関わった経験から、保坂区長は「公立の学校では、受験で挫折を味わった子の支援にも力を入れていく必要がある」と話します。

 吉田さんは「受験前に子どもの不安や不満が強くなる、長文を読んでいても把握できていないなどの症状が出たら、受験うつの疑いがあるかもしれません」と話します。100%合格する保証はない受験。不確かな現実に対して親が不安を大きくし、子どもの行動を一つ一つ強烈に叱れば、子どもは「親ががっかりするのを見たくない」という思いの積み重ねから、受験に恐怖心を感じるようになってしまいます。

 小さい子は特に、お母さんの影響をダイレクトに受けます。年齢を重ねると、受験は自分にとってプラスになるものだと分かってきますが、小さいうちは「学歴」が何かさえ理解できていません。「自分はお母さんのプライドを満たす道具なんだと思ってしまう。中学受験に失敗すると、親に見放されるかもしれないという恐怖心から、その後の高校・大学受験でうつになりかねません」(吉田さん)

子どもはお母さんの心理状態の鏡

 大人のうつと子どものうつとでは症状が違うので、子どもの行動には注意したいところです。心のエネルギーは子どものほうが強いといいます。子どもはふさぎ込むというよりも、調節が利かなくなって感情を爆発させることが多く、食欲が出過ぎたり、逆になくなったり、また甘いものを延々と食べ続けるなどの変化があったら、要注意です。

 不調を訴え受診する親子の話を聞くと、子どもだけでなく、母親にもうつが見つかる場合が多いそうです。「お母さんが付きっきりで何でもやってあげる共依存の典型的な例です。子どもはお母さんの心理状態の鏡です。全員がうつだったという家族もいました。元々あった問題が受験を通して加速し、うつ病のエリアに入っていったケースです」と吉田さん。

 受験うつになってしまったら、どうやって治せばいいのでしょうか。「まずは、親の治療から始めます」と吉田さんは言います。

 「親という器の中に子どもがいるので、子どもだけ治しても、元に戻ってしまいます。また、大人のほうが心が成熟しているので、医師のアドバイスを聞いてもらえます」

 吉田さんは、生活を管理するよう指導します。親子で早寝早起きをして、走ったりラジオ体操やダンスをしたりと体を適度に動かすことで脳の神経を活性化させます。そしてカウンセリングで心の内を表現したり、医学的な治療を受けたりすることで効果が出るそうです。