「長」を経験することで、地域の情報網やセーフティーネットが広がった

 「成人教育委員会」は、保護者に対してセミナーや講演会を実施する組織である。これまではお金を払って、人権系のNPO法人に講演に来てもらっていた。もちろん、人権も大切なテーマではあるが、毎年毎年同じ講演をやって意味があるのか、ということを役員3人で考えた。

 筆者は9年前に一般社団法人インターネットユーザー協会を立ち上げ、ネットリテラシーに関する講演を日本全国で行っている。PTA向けの講演レジュメもたくさん持っている。

 「だったら自分達が講師となって、手づくりのセミナーをやろう」ということになった。そうすれば講演料もタダである。

 参加者数は例年通りでそれほど多くなかったが、内容は好評で、結果的に前期と後期の2回行うことになった。

 娘が小学5年時のPTA広報委員長、そして小学6年時の「成人教育委員会」副委員長と子ども会会長。周りのメンバーはほとんどが女性というなかで、3つの「長」を経験して感じたことがある。地域や子ども関連のボランティア活動においてまだ少数派であるパパが活動に参加する場合、何らかの「長」をしてみると、意思決定が早くなったり、組織の見直しが障りなくできたりする良い機会になるように思う。

 実際、PTAには多くの古い暗黙の慣習が残っており、女性が主体となって行うものという意識が残っている場合も少なくない。そんななかで、女性トップの下に男性がいると、トップが仕事を頼みづらく、周囲の人も「ここまで頼んでは申し訳ないのでは…」などと気を使ってくれるので、結果として「いつまでも他人行儀で仲良くなれない」という現象が起こってしまいがちだ。

 PTAや子ども会を、抽選で当たりませんようにと頭を低くしてやり過ごしたり、1年だけ我慢すればと考えていたりする保護者はきっと多いだろう。共働き世帯のパパも、「他のママと仲良くなるより、仕事が少ないほうがいいや」と思うかもしれない。だが、僕の場合は、これらのグループに参加することで、結果的にママ友の情報網に参加できたり、こちらが出かけているときに子どもが困ったことになった場合のセーフティーネットになってもらえたりした。

 ひとり親はマイノリティーな存在だから、プライバシーを守りたいとか、できるだけ目立たずひっそりと生活したいという考え方も分かる。だが、孤立しがちなシングルだからこそ、より多くのママと信頼関係を築くことには、大きなメリットがある。