統計データを使って、子育てや教育にまつわる「DUALな疑問」に答える本連載。日本ではスマートフォンやタブレット、コンピューターなど、子どものデジタルデバイス利用については常に賛否両論で、子どものうちは触らせないというご家庭もあるかもしれません。一方で、ITリテラシーを高めたいと、早期教育に努めるご家庭もあるでしょう。では実際はどのような影響があるのでしょうか? 「コンピューターを使い始めた年齢と学力の相関」を分析します!

デジタル・ネイティブがパソコンを使えない?

 こんにちは。教育社会学者の舞田敏彦です。予告と異なりますが、今回は子どものコンピューター利用のお話です。

 「幼少の子どもには○○させるべき」「頭のいい子は、幼少期をこう過ごした」…。いつの時代でも親御さんの関心をひくテーマで、育児雑誌でもこの手の特集が頻繁に組まれています。

 正直、私はこういう話はあまり好まないのですが、偏見ばかりというのはよくないと思い、あるデータを分析してみました。「コンピューターを使い始めた年齢と学力の相関」です。

 21世紀は情報化社会。今の子どもたちは、生まれたときからコンピューターやインターネットに触れている「デジタル・ネイティブ」世代です。世界有数の技術大国の日本では、子どもはさぞパソコンを使っているのだろうと思われるかもしれませんが、データをみるとそうではありません。図1をご覧ください。

 13~15歳の情報機器の所持率を主要国で比べたグラフですが、パソコンの所持率は日本が最も低くなっています。自分のパソコンを持っている者は3割しかいません。ネットでの情報収集や交信はスマートフォンでもできますが、こちらの所持率も半分未満で先進国では最低です

 こういう事情のためか、日本の生徒のパソコンスキルは低し。コンピューターで「グラフを作る」「プレゼン資料を作る」「動画資料を作成する」といった項目に、「自分で上手にできる」と答えた生徒の割合は、世界でも最低レベルです(OECDの国際学力調査「PISA 2009」)。

※編集部注:「PISA(Programme for International Student Assessment)」はOECD(Organisation for Economic Co-operation and Development:経済協力開発機構)」が進めている国際的な学習到達度に関する調査のこと

 日本の場合、謙虚な回答をした生徒が多いのかもしれませんが、パソコンの所持率が低いこと(=利用頻度が低いこと)を考えると、実態を言い当てているかもしれません。「最近の新入社員はパソコンを使えない」という企業の声をよく聞きますしね。私の経験でも、エクセルで簡単な棒グラフも作れない学生さんに出会うことがしばしばです。