小学校高学年ごろから、“知的刺激”が重要になる

 なぜ子ども時代のマイパソコン所有率と学力には、高い相関関係があるのでしょうか?それは、子ども時代からパソコンを使うことで、“知的刺激”を受けられるからです。

「思春期などの限られた時期に、知的刺激を与えることが大事」と話す脳科学者の中野信子さん
「思春期などの限られた時期に、知的刺激を与えることが大事」と話す脳科学者の中野信子さん

 脳科学者の中野信子さんは「思春期などの限られた時期に、知的刺激を与えることが大事」と話します。「“知能”をつかさどるのが、前頭前皮質の背外側部(はいがいそくぶ)と呼ばれる領域で、ここが厚いかどうかで、その人の知能の程度が決まるとされています。ここがいっきに厚くなる時期が、およそ小学高学年の10歳から中高生あたり。どこまで厚くなるかは、主にその時期の教育の仕方、“知的刺激”の受け方によるのです」(中野さん)

 友達と遊んだり、本やテレビに触れたりすることで知的好奇心を膨らませることも重要ですが、時空間の広がりという観点では、パソコンやインターネットは、本やテレビとは比べ物にならないほどの刺激がある、と中野さんは指摘します。「マルチウィンドウが標準のパソコンでは、複数のデータや文献を並べて吟味することができます。多元的に考えたり、考える力を養ったりという点では、スマートフォンなどよりパソコンの方が格段に優れています。私は、使えるツールがそこにあるなら可能な限り使うべき、という考えです」(中野さん)

 「早くから子どもにパソコンを使わせることに、不安を感じる親御さんが多いことも理解しています。ここは、親御さんのリテラシーが大変重要になります。自由に使えるところと抑制するところなど、子どものパソコン利用に対する規範を明確にしておくことや、さまざまな情報について客観的な正しい判断を親から与えられることが大切です。ペアレンタルコントロール(後述)のような、子どもを有害コンテンツから保護する仕組みを上手に活用することも必要です。自分の過去の失敗経験を踏まえながら、危険な事例を教えるのも一つの方法ですね」(中野さん)

 「『バーチャルとリアルのコミュニケーションにはこういう差がある』『生身の対面コミュニケーションにはバーチャルとは違った価値がある』ということを教えるのも大切」と中野さんは言う。「リアルが大事だといいたいのであれば、両方の価値の違いを比較すべき。結局はどちらも大事で、バランスよく使うことが重要だと思います」(中野さん)

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