湊かなえさんの傑作ミステリー短編集『望郷』から三編がオムニバスドラマ化され、9月28日(21時~、テレビ東京系列)に放送されます。そのうちの一つ『みかんの花』に主演する広末涼子さん。ドラマの見どころのほかに、長男、次男、長女と3人の子育て&仕事の両立ライフを楽しむ広末さんに、じっくり話を伺いました。

血液型よりもよほどきょうだい構成のほうが人格形成に影響があると思う

日経DUAL編集部 今回のドラマは、湊かなえさんの短編集が原作になっていますね。

 湊かなえさんの世界観がどっぷり3本立てで見ることができるオムニバス形式に仕上がっています。サスペンス性はもちろんのこと、重厚感もあり、面白みもある作品。3作品とも湊さんの出身地である広島県・因島が舞台になっているので、現地で撮影してきました。撮影当初は梅雨の時期で雨に悩まされ、後半は太陽の洗礼を受けるという過酷なロケでしたが、その分、景色や空気感みたいなものも作品の色を強く表現してくれていると思います。

―― ドラマの中で広末さんは、20年前に自分と母を島に残して東京に行ってしまった姉をずっと恨み続けている妹役を演じています。

 撮影現場に湊さんが足を運んでくださって、お話をする機会がありました。姉妹の関係性をよく描いている作品だと思っていたら、案の定湊さんも姉妹で育っていて、私も妹がいますから、お互い姉同士。今回私は妹役を演じましたが、「妹ってこうだよね、姉はこんなふうに感情をぶつけられないよね」と盛り上がりました。どこかお姉ちゃんは我慢しなさいと育てられていて、姉からすると思ったままを言うのが妹の特権。けれど、妹からすると姉は自由に見えたり身勝手に思えたりする。血液型よりもよっぽどきょうだい構成のほうが人格形成に影響があると思います

 今回は、ある秘密が姉妹の確執になっていて、水野美紀さん演じる姉がその秘密を持ち続けることで妹をはじめ家族を守り、島に帰りたくても帰れないという思いを抱えています。一方、妹は20年もの間、島で我慢し、姉に対してある意味憎しみに変わるくらいの悔しさを感じています。妹ならではのせりふ回しも多く、姉的な考え方では演じられない役。そのため、頭で考えてしまうと発せられないせりふもたくさんあり、思ったままをポンポン言葉にしていくようにしました。

―― 一番印象に残っているシーンは何でしょう?

 20年の時を経て妹が姉に感情をぶつけ、妹が真実を理解してくれたことを姉が悟るシーンです。時間を経たからこそ相手の気持ちが分かったり、受け入れられたりするということはきょうだい間でもあると思いました。

 私も妹と、お互い大人になり、社会に出て仕事を持つようになり、子どもが生まれて家族を築いていく中で、理解し合えるようになったと思います。妹は学生時代、私の仕事のせいで周りに騒がれるなど、相当迷惑だったと思うのですが、今はものすごく応援してくれています。若いころはどちらも自分の人生を見ているので、相手の気持ちになって考えられないのは当たり前のこと。ドラマの2人も同じで、お互い受け入れることができる年齢がいつかはくるのだと改めて感じました。

―― プライベートでは、妹さんと子育ての悩みなどの話をしたりしますか?

 お互い仕事が忙しく、妹は実家の高知県にいるのでいつも話すことはできませんが、たまに深夜の長電話をしたり、私がお盆やお正月に実家に帰省したり、妹が子どもを連れてうちに泊まりにきたりしたときに、たまっていたものを全部話します。子育ての悩みや不満、夫婦関係や親のことなど、全部話しますね。女同士なので、異性のきょうだいとは違う近さがある。当たり前のように、一番信頼し安心できるし、応援しているし、離れていても一番近くに感じる存在だと思っています。子ども達の誕生日や父の日、母の日、季節の行事は必ず連絡を取り合って、手紙やプレゼントを贈り合っています。

―― きょうだいがいるからこそのメリットってありますよね。 

 もちろん色々な環境があるし、一人っ子ならではの良さがあると思いますが、自分自身きょうだいがいる中で育ったので、きょうだいがいることのポジティブな面を見てきました。また母親として、2人目、3人目の子どもができると、とってもメリットがありました。きょうだいの社会が家の中に出来上がるにつれて、私は自分に対して寛容になり、肩の力が抜けていい意味で適当になれた。私がそうなることで、子ども達の自立心も育つようになったと思います