ポーズを取らない、キャラを作らないの自然体で

―― 女優というお仕事柄、子育てで広がった部分がそのまま仕事の幅につながり、良いリンクができていることはありますか?

 そうだとうれしいですね。年齢を重ねることもそうですが、子ども達と向き合うことで成長させてもらっている部分は、仕事にも活きてくると思います。もちろん母親でない人が、母親役ができないかというと、女優業はそう単純なことではない。経験したことをそのままそっくり体現するわけではなく、様々な角度から深く感情や役を掘り下げていくという仕事です。そういう意味で、色々な人とつながり、思いもよらなかった色々な場面を体験させてもらうことは、これまでの私にはなかった視点を持たせてくれているような気がします

―― ママ友や学校など、子どもがいることで世界が広がることはありますよね。

 自分が選択していったり、直接自分に返ってきたりする世界ではない付き合いは、ある意味初めて。学生時代に学校を選ぶことも、友人や先生と付き合うことも、仕事を始めて現場にいることも、全部自分に返ってくるので、うまくいかなければ自分が反省し、次に頑張るだけ。

 だから、子どもを介してママ友や学校と付き合うときに、最初はキャラ設定をどうすればいいのか分かりませんでした。今考えるとキャラ設定なんていらないですけど(笑)。最初は親だからちゃんとしなければいけない、という気持ちがあり、電話での話し方や言葉の選択もしかり、初めての父母会の服装や発言など、難しかったです。でも今思うのは、やっぱり素のままでいくほうが、周囲の皆さんが助けてくれるし、親しくなれる近道です。ポーズを取ることもなく、キャラを作ることもなく、自然体でたくさんの方と関わらせていただいて、ありがたいと思っています。

家に帰ったら仕事ではなく、家のことをする

―― お子さんがママのお仕事について何か言うことはありますか?

 仕事をしている背中を見せたいとは思いますが、私が仕事に集中できなくなるので、子どもを現場に連れていったことはありません。

 まだ長男が小さかったころ、久々に仕事を再開するタイミングで映画の台本を家で読んでいたんですけど、全然感情を動かされなくて。台本の中の彼女は人生の大きなターニングポイントで、大失恋をするなどドラマティックな物語があったのに、そんなことより1歳の息子のことのほうが気になってしまって。そういう生活の中で読んでしまったからダメだったのだと思います。それからは家で台本を読むことはやめ、そのルールは今でも崩していません。

 家でせりふを覚えるとか、台本を集中して読みたいと思うと、途中で邪魔が入ることが嫌だと思うし、早く終わらせられなかったり、何かが勃発したりしたときにイライラしてしまうと思うので、そこは開かないで諦める。自分の中ではそう決めています。その代わり、台本を読む、原稿をチェックするというのは、家を1時間早く出たり、家に帰る前の1時間だけと決めたりして、外でやることにしています。家に帰ったらどんなに時間の余裕があっても、仕事ではなく家のことをする、子どもと遊ぶようにしています。私はそんなに器用じゃないのかもしれません。

 子ども達は私が出ているテレビなどは見ますが、生まれたときから見ているので何も特別なことだとは思っていないようです。まだ私の仕事のことを詳しくは理解していないと思いますが、それはまだ先でいいのかなと。長男は周りから言われることが多く、まだポジティブにしか受け取っていないようですが、これから男の子で思春期になってくるといやになったり悩んだりすることはあるでしょうね。

 でも、私は自分の仕事を誇りに思っていますし、もしかしたらこれから先、仕事で波風立つことなんかもあるかもしれないけれど、子どもは一番そばにいて私を見ている。親子の信頼関係が崩れないコミュニケーションを取っていけると自分では思っています。