欧州では11時間インターバルや週35時間上限など規定がある

 欧州はインターバル規制があり「時間外労働などを含む1日の最終的な勤務終了時から翌日の始業時までに、11時間あけないと次の仕事をはじめてはいけない」などの規定があります。「労働時間は週35時間まで」という規定があるのはフランスです。日本にも上限はあります。しかし36協定の特別条項で労使が合意すれば100時間でも200時間でも時間外労働ができる。つまり、「働かせ放題」の現状です。ちなみに過労死レベルは80時間。さて、みなさんのお勤め先の労働環境はいかがでしょうか?

 この問題は「過労死」や「メンタル疾患」の要因、「女性活躍」を阻み、「男性の家庭参画」を阻み、さらには少子化の要因にもなると指摘されていました。しかし経営者からの反発が強いと、なかなか踏み込んだ議論がなされないものでした。政府は問題意識を持っていても、「世論の盛り上がり」が足りないと強く押し出すのは難しい。

 そこで、この問題に10年取り組んでいるワークライフバランス社の小室淑恵さんとNPO法人ファザーリング・ジャパン、そして日経DUALの羽生編集長などとともに、長時間労働フォーラムを開催したり、企業や働く当事者にアンケートをとって、世論を、政府に見える化する工夫をしたのです。

ついに国策プランに「長時間労働是正の法規制」が盛り込まれた

 2016年6月2日に閣議決定された一億総活躍プランではこのような文章が公的に盛り込まれました。

 「<長時間労働の是正>長時間労働は、仕事と子育てなどの家庭生活の両立を困難にし、少子化の原因や、女性のキャリア形成を阻む原因、男性の家庭参画を阻む原因となっている。戦後の高度経済成長期以来浸透してきた“睡眠時間が少ないことを自慢し、超多忙なことが生産的だ”といった価値観が、この3年間で変わり始めている。長時間労働の是正は、労働の質を高めることにより、多様なライフスタイルを可能にし、ひいては生産性の向上につながる。今こそ、長時間労働の是正に向けて背中を押していくことが重要である。

 週49時間以上働いている労働者の割合は、欧州諸国では1割であるが、我が国では2割となっている。このため、法規制の執行を強化する。(中略)さらに、労働基準法については、労使で合意すれば上限なく時間外労働が認められる、いわゆる36(サブロク)協定における時間外労働規制の在り方について、再検討を開始する。時間外労働時間について、欧州諸国に遜色のない水準を目指す。あわせて、テレワークを推進するとともに、若者の長時間労働の是正を目指し、女性活躍推進法、次世代育成支援対策推進法等の見直しを進める。」

 検討開始は10年の一億総活躍プランの工程表で2016年とされていました。

 参院選後はどうなるのか? 一億総活躍推進委員一同見守っていましたが、新しい内閣において、加藤勝信一億総活躍担当相が「働き方改革」担当相に就任しました。

首相官邸ホームページより。ついに「働き方改革」が動き出しました。
首相官邸ホームページより。ついに「働き方改革」が動き出しました。

■長時間労働の是正についての検討開始時期が、2106年と誤りがございました。正しくは2016年です。お詫びして訂正いたします。2016年9月12日