就職、転職、独立、そして、結婚、出産、育児……女性の人生はいくつものライフイベントによって彩られ、同時に多くの迷いも生まれるもの。社会の第一線で活躍する女性から、人生の転機とその決断のポイント、充実したライフ&ワークのために大切にしている価値観を聞く連載企画。今回は、ファイナンシャル・プランナー(FP)として活躍する前野彩さんのインタビュー後編です。日経DUALの記事やイベントでも大人気の前野さんが、“お金のプロ”としてキャリアを築くに至った経緯、ワーク&ライフでのこだわりについて、編集長の羽生祥子がインタビューします。※前編『前野彩 保健室の先生が、34歳でFPとして独立した理由』もお読みください。

「平日は毎日ブログを書く」と自分に課して3年間続けた

羽生編集長(以下、羽生) 34歳でFPとして独立されてからは順調でしたか?

前野さん(以下、敬称略) 自宅開業だったので事務的な手続きそのものはシンプルでしたが、独立を想定した準備をしていなかったので、分からないことだらけ。講演の営業や打ち合わせも初めてでしたし、請求書の発行の仕方もネットで調べて何とかフォーマットを作って……と手探り状態。「打ち合わせの雑談って、何を話すんだろう?」というレベルだったんですよ(笑)。“白い手帳”が恐怖で、「何か予定を埋めなきゃ」というプレッシャーは日々感じていました。

羽生 本当にゼロからの出発だったんですね。

前野 普通は開業の時に最初のお客さんは友達のツテをたどるとかあると思うのですが、私の場合は結婚してから大阪に来たので、友達といえばFP受講生時代の仲間。それってつまり、同業者なんですよ(笑)。だからとにかく宣伝しなきゃということで、チラシやホームページ制作から始めました。ホームページではまめな情報更新が信頼に結びつくと思ったので、「平日は毎日ブログを書く」と自分に課して3年間続けました。

羽生 3年間ということは1000日プロジェクトですね。

前野 そうなりますね。本を出したタイミングまでずっと続けました。講師がお金を払って無料セミナーを開催して、顧客を呼び込むような宣伝方法もあったのですが、私のポリシーには合わないと思ってそれはしませんでした。

羽生 なぜポリシーに合わないと思ったのですか?

前野 無料で集客して営業につなげる形だと、どうしても“出し惜しみ”して「ここから先は有料になります」という情報提供になると思うんです。お客さんからすると“欲求不満型”。私はちゃんと満足して帰っていただきたかったので、はじめから有料で出し惜しみせずに伝えるスタイルを選択しました。

相談依頼が入ると必ず電話でレスポンスをするよう心がけた

羽生 前野さんの講演はいつも大人気で、参加者の満足度が高い内容ばかりですものね。

前野 そう言っていただけると嬉しいです。

羽生 では、営業らしい営業はあまりなさらなかった?

前野 お客さんのニーズがあると思って、結婚相談所には話をしました。コネはないので飛び込みの電話です。会ってもらえて不思議だったのですが、受付の人が社長に「(前野さんの)感じがすごくいいので、ぜひ会ってみてください」と言ってくださったのだと後から聞いて、ありがたいなと思いました。

 「感じがいい」と思ってもらえたのなら電話でのコミュニケーションを強化しようと考えて、個人のお客様からの相談依頼が入ると必ず電話でレスポンスをするように心がけました。すると、私がどういう人かというのも何となくわかっていただけてお互いに安心感があるし、日程調整も早く決まったりするんです。

羽生 私も前野さんに初めて電話でお話をした時に「感じがいい」と思ったのを覚えています。ご自分の強みを客観的に受け止めて、ビジネスに活かしていったということですね。

前野 そういうと何だかカッコよく聞こえちゃいますけれど、私の感覚としては、周りの方に教えていただきながら試行錯誤してきた感じです。自分に経験がないことはよくよくわかっているので、とにかく、行動するしかないと思っています。