FPとして何がしたいかが大事

羽生 独立を希望している方には、どんなことをお伝えされているんですか?

前野 「FPという肩書きがつくことが目的ではなくて、FPとして何がしたいかが大事ですよ」と伝えています。たとえば、「リタイア層に向けて個別相談をしたい」というゴールが明確なら、手法が見えてくるじゃないですか。若い女性がターゲットであれば、区の広報に宣伝載せるより、ホームページの見た目を変える方が有効かもしれないとか。

 振り返ると、私はいつも「こんなことがやってみたい」という目標がすごく明確だったから、行動に結びつきやすかったのだと思います。「でも、できなかったらどうしよう」と一歩が踏み出せない人がすごく多いのですが、「じゃあ、もし“できたら”どうします?」と問いかけると、発想が変わっていくんですよ。

羽生 とはいえ、いろいろなお客さんがいらっしゃるわけですよね。ストレスを感じることはないですか?

前野 たしかに相性というものがあって、私の経験や提供する情報、キャラクターをいいと思ってくださる方もいれば、そうではない方もいると思います。でも、後者の方に無理して自分を合わせる必要もないと思っていて、「私じゃないほうがいいかも」と感じたときは、ほかの専門家を紹介したり、「FPもいろいろいるので、合う方を探してくださいね」とお伝えするようにしています。あと、ホームページの見た目も、絵や写真や漫画を多用して、私自身のキャラクターや強みが分かりやすく表現されるように意識しています。そうすると、カッチリした論理性を求める方は、私を訪ねてこないと思うので(笑)。

事実婚歴16年、デメリットはなかったです

羽生 なるほど。自分らしく思い切り仕事を楽しむための工夫をなさっているんですね。リフレッシュとしては何を?

前野 一番のリフレッシュはツーリングですね。1年に1回、1週間から10日くらい、大型バイクに乗って、一人でどこまでも行きます。バイクも好きなんですが、旅先での出会いとか、温泉にゆっくりつかる時間とかが最高で。学生時代は四国・九州が多かったですが、最近は東北や北海道が好きですね。

羽生 一度写真を見せていただきましたが、バイクにまたがる前野さん、カッコいいんですよね。もう少し踏み込んでプライベートのことも伺ってよろしいですか? 前野さんは2000年にご結婚されたということですが、事実婚を選択されているんですよね。

前野 はい。もともと「本人同士が一緒にいたいだけなら、何も国に届けて認めてもらわなくてもいいんじゃない?」という思いが学生時代からあって、入籍しない結婚の形があると知ったので調べてみたんです。デメリットがないかという視点で。そこは計算高いですので(笑)。

羽生 学生時代に、事実婚のデメリットについて調べ上げた。結果はいかがでしたか?

前野 デメリットはなかったですね。私はずっと仕事をするつもりでしたけれど、仮に専業主婦になったとしても健康保険にも国民年金の第3号にも加入できるし。子どもについても産む気がなかったので、自分たちの問題さえクリアされればいいという前提でした。相手が亡くなったときの法定相続人になれないという点に関しても、「ずっと働いて自分で稼いでいたら問題ない」と思いました。いざとなれば、正式に遺言書を1枚描いてもらえばいいだけのことですし。結論として、「不利益ないじゃん」。今のパートナーにも考えは伝えていました。だから、彼からプロポーズされたとき、私、ブチ切れたんです(笑)。

羽生 プロポーズされてブチ切れた。

前野 はい。「結婚する気ないって、言ったよね!? 私と結婚したいって、どういうこと!?」って。

羽生 パートナーはショックだったんじゃないですか。

前野 よく覚えていませんが、そうかもしれないですね。結局、親に喜んでほしいという気持ちもあって、結婚式だけはやって、入籍はせず。双方の親も私たちの意志を理解してくれたので、そのまますんなりと。特に問題なく、今に至ります。住宅ローンも普通に組めますし、保険の受取人になることもできるし。事実婚歴16年になりました。

羽生 旧姓と新姓を使い分けたりとか、結婚後に実質的な不便を強いられるのは女性のほうなので、今のお話、真剣にメモする読者は多いと思います。事実婚がうまくいくコツはありますか?

前野 周りにも何組かいますが、共通しているのは、女性のほうがパワフルかな。女性が経済的にも精神的にも自立していることが必須条件ではないでしょうか。事実婚を積極的にすすめるわけではないのですが、「どう?」って聞かれると「いいよ」と答えています。結婚の形に限らず、いろんな選択肢を視野に入れて可能性を広げてみることが、自分らしく生きる入り口になるとも思います。

羽生 とても参考になるお話をありがとうございました。これからもDUAL読者のサポーターとしてよろしくお願いします。

(文/宮本恵理子 写真/鈴木愛子)